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コウノトリ
コウノトリ |
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作品ID | 59323 |
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著者 | アンデルセン ハンス・クリスチャン Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「マッチ売りの少女 (アンデルセン童話集Ⅲ)」 新潮文庫、新潮社 1967(昭和42)年12月10日 |
入力者 | チエコ |
校正者 | 木下聡 |
公開 / 更新 | 2020-04-02 / 2020-03-28 |
長さの目安 | 約 13 ページ(500字/頁で計算) |
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ある小さな村の、いちばんはずれの家に、コウノトリの巣がありました。コウノトリのおかあさんは、巣の中で、四羽の小さなひな鳥たちのそばにすわっていました。ひな鳥たちは、小さな黒いくちばしのある頭を、巣の中からつき出していました。このひな鳥たちのくちばしは、まだ赤くなっていなかったのです。
そこからすこし離れた屋根の頂きに、コウノトリのおとうさんが、からだをまっすぐ起して、かたくなって立っていました。おとうさんは、かたほうの足を、からだの下に高く上げていました。こうして、見張りに立っているあいだは、すこしぐらい、つらい目にもあわなくては、と思ったからでした。おとうさんは、木でほってあるのかと思われるほど、じっと立っていました。
「巣のそばに、見張りを立たせておくんだから、家内のやつは、ずいぶんえらそうに見えるだろうな」と、コウノトリのおとうさんは考えました。「このおれが、あれのご主人だなどとは、だれも知るまいよ。きっと、ここに立っているように、言いつけられているんだと、思うだろうさ。それにしても、ずいぶんだいたんだろうが!」こうして、コウノトリのおとうさんは、なおも、片足で立ちつづけていました。
下の通りでは、大ぜいの子供たちがあそんでいました。そのうちに、コウノトリを見つけると、その中のいちばんわんぱくな子が、むかしからある、コウノトリの歌をうたいだしました。すると、それにつづいて、みんなもいっしょにうたいだしました。けれども、はじめにうたった子がおぼえていただけを、みんなは、ついてうたっているのでした。
コウノトリよ、コウノトリ、
とんでお帰り、おまえのうちへ
おまえのかみさん、巣の中で
四羽の子供を寝かしてる。
一番めはつるされる、
二番めはあぶられよ。
三番めは焼き殺されて、
四番めはぬすまれよ!
「ねえ、あの男の子たちが、あんなことをうたっているよ」と、コウノトリの小さな子供たちは、言いました。「ぼくたち、つるされたり、焼き殺されたりするんだってさ」
「あんなこと、気にしないでおいで」と、コウノトリのおかあさんは、言いました。「聞かないでいらっしゃい。なんでもないんだからね」
けれども、男の子たちは、なおもうたいつづけて、コウノトリのほうを指さしました。中にひとりだけ、ペーテルという男の子は、動物をからかうのはいけないことだと言って、仲間にはいろうとしませんでした。コウノトリのおかあさんは、ひな鳥たちをなぐさめて、こう言いました。「心配しなくてもいいんだよ。ほら、ごらん。おとうさんは、あんなにおちついて、じっと立っていらっしゃるじゃないの。おまけに、片足でね」
「ぼくたち、とってもこわい!」ひな鳥たちは、こう言って、頭を巣のおくへひっこめました。
つぎの日も、男の子たちが、またあそびに集まってきました。コウノトリを見ると、きのうと同じように…