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ブタ飼い
ブタかい
著者アンデルセン ハンス・クリスチャン
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「マッチ売りの少女 (アンデルセン童話集Ⅲ)」 新潮文庫、新潮社
1967(昭和42)年12月10日
入力者チエコ
校正者木下聡
公開 / 更新2020-03-26 / 2020-02-21
長さの目安約 12 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 むかしむかし、ひとりの貧しい王子がいました。王子は一つの国をもっていましたが、それはとても小さな国でした。でも、いくら小さいとはいっても、お妃をむかえるのに、ふそくなほどではありませんでした。さて、この王子はお妃をむかえたいと思いました。
 それにしても、この王子が皇帝のお姫さまにむかって、「わたくしと結婚してくださいませんか?」などと言うのは、あまりむてっぽうすぎるというものでした。けれども、王子は、思いきって、そうしてみました。なぜって、王子の名前は遠くまで知れわたっていましたし、それに、王子が結婚を申しこめば、よろこんで、はい、と、言いそうなお姫さまは、何百人もいたからです。ところで皇帝のお姫さまは、はい、と、言ったでしょうか?
 では、わたしたちは、そのお話を聞くことにしましょう。
 王子のおとうさまのお墓の上には、一本のバラの木が生えていました。それは、なんともいえないほど美しいバラの木でした。花は五年めごとにしか咲きませんが、そのときにも、ただ一りんしか咲かないのです。でも、そのにおいのよいことといったら、またとありません。一度そのにおいをかぐと、だれでも、どんないやなことも、心配ごとも、忘れてしまうほどでした。王子はまた、一羽のナイチンゲールを持っていました。このナイチンゲールは、たいへんじょうずに歌をうたうことができました。その小さなのどの中には、美しい節が、いっぱい、つまっているのではないかと思われました。王子は、このバラの花と、ナイチンゲールを、お姫さまにさしあげようと思いました。そこで、さっそく、その二つを大きな銀の入れ物に入れて、お姫さまのところへ持っていかせました。
 皇帝は、その贈り物を大きな広間に運びこませて、自分も、あとからついていきました。その広間では、お姫さまが侍女たちと、「お客さまごっこ」をして、あそんでいました。お姫さまたちには、ほかのことは、なんにもできなかったのです。お姫さまは、贈り物のはいっている、大きな入れ物を見ると、大よろこびで手を打ちました。
「かわいらしい小ネコが、はいっていますように!」と、お姫さまは言いました。――ところが、出てきたのは、美しいバラの花でした。
「まあ、なんてきれいに造ってあるのでございましょう!」と、侍女たちが、口々に申しました。
「きれいどころではない!」と、皇帝は言いました。「なんと言ったらいいのか! じつに美しい!」
 ところが、お姫さまは、花にさわってみて、もうすこしで泣き出しそうになりました。
「まあ、いやですわ、おとうさま!」と、お姫さまは言いました。「これは造ったお花ではなくって、ほんとのお花ですわ!」
「あら、いやですこと!」と、侍女たちも、口をそろえて言いました。「ほんとのお花でございますわ!」
「さあ、さあ、おこっていないで、もう一つのほうに、何がはいっているか…

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