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詩とマイクロホン
しとマイクロホン
原題Poetry and the Microphone
著者オーウェル ジョージ
翻訳者The Creative CAT
文字遣い新字新仮名
入力者The Creative CAT
校正者
公開 / 更新2019-04-23 / 2019-03-28
長さの目安約 20 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 一年ほど前、私は何人かと共にインドに向けて文学作品を放送する事業に携わっていた。種々のものをとりあげた中で、かなりの部分が現代ないしそれに近い時代の英国作家の韻文だった――例えばエリオット、ハーバート・リード、オーデン、スペンダー、ディラン・トーマス、ヘンリー・トリース、アレックス・コンフォート、ロバート・ブリッジズ、エドムンド・ブルンデン、D・H・ローレンス。詩の実作者に参加してもらえる場合はいつでもそうしていた。何故にこういう特殊な番組(ラジオ戦争における遠方からのささやかな側面攻撃だ)が始められることになったかは改めて説明するまでもないが、インド人聴衆に向けた放送である、という事実によって、我々の技法がある程度まで規定されていたという点には触れる必要があるだろう。要点はこうだ。我々の文芸番組はインド大学の学生たちをターゲットにしていた。彼らは少数かつ敵対的な聴衆で、英国のプロパガンダと表現しうるものは一つとして届かなかった。あらかじめ、聴取者は多めに見積もっても数千人を越すことはないだろうということがわかっていた。これが通常オンエアできる範囲を超えて「ハイブロウ」な番組を作るための口実になったのだ。
 言語は知っているものの文化的背景を共有しない人々に対して詩を放送するなら、かなりの分量の注釈と説明とが欠かせない。そこで我々が通常従っていた定石というのが、月刊文芸誌の体裁をとる、というものだった。編集部員がオフィスにいる設定で、次号に掲載する内容を話し合う。一人が一篇の詩を推せば、他の者が別のこれはどうかという。短い議論があって、そこに詩そのものが登場する。朗読するのは別の人物で、できるなら詩人本人が望ましい。この詩から自然にもう一篇の詩が招集され、かくしてプログラムは流れていく。詩と詩との間の議論は三十秒以上続くのが通例だった。三十分番組だったので、登場人物を六名にすると最も具合が良いようだった。こういったタイプの番組はどことなくまとまりのないものにならざるを得ないのだが、一つのテーマを決め、それを巡る形で番組を作ったので、一応の統一感は出せた。例を挙げれば、我らが想像上の雑誌のとある号は、まるまる戦争関連だった。それにはエドマンド・ブルンデンの二作、オーデンの「一九四一年九月」、G・S・フレイザーの長詩「アン・リドラーへの手紙」からの抜粋、バイロンの「ギリシャの島々」、T・E・ロレンスの「沙漠の叛乱」からの抜粋が含まれていた。これら半ダースの作品は、前後に配置された議論と相まって、戦争に対し人が取り得る態度をよくカヴァーしていた。放送時間のうち、詩と抜粋された散文はおよそ二十分間で、議論がおよそ八分間だった。
 この定石はいささか滑稽であり、またかなり恩着せがましく見えるかもしれないが、次のような利点がある。シリアスで時として「難解な」韻文を放送…

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