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冠松次郎氏におくる詩
かんむりまつじろうしにおくるし
作品ID59414
著者室生 犀星
文字遣い新字旧仮名
底本 「紀行とエッセーで読む 作家の山旅」 ヤマケイ文庫、山と渓谷社
2017(平成29)年3月1日
初出「読売新聞」1930(昭和5)年8月17日
入力者富田晶子
校正者雪森
公開 / 更新2020-02-04 / 2020-01-24
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


劔岳、冠松、ウジ長[#ルビの「ちよう」はママ]、熊のアシアト、雪渓、前劔
粉ダイヤと星、凍つた藍の山々、冠松、ヤホー、ヤホー、

廊下を下がる蜘蛛と人間、
冠松は廊下のヒダで自分のシワを作つた。
冠松の皮膚、皮膚に沁みる絶壁のシワ、
冠松の手、手は巌を引ッ掻く。
冠松は考へてゐる電車の中、
黒部峡谷の廊下の壁、
廊下は冠松の耳モトで言ふのだ、
松よ 冠松よ、

冠松は行く、
黒部の上廊下、下廊下、奥廊下、
鐵でつくった[#「つくった」はママ]カンヂキをはいて、
鐵できたへた友情をかついで、

劔岳、立山、双六谷、黒部、
あんな大きい奴を友だちにしてゐる冠松、
あんな大きい奴がよつてたかつて言ふのだ、
冠松くらゐおれを知つてゐる男はないといふのだ
あんな巨大な奴の懐中で、
粉ダイヤの星の下で、
冠松は鼾をかいて野営するのだ。



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