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兎と亀
うさぎとかめ
作品ID59435
原題The True History of the Hare and the Tortoise
著者ダンセイニ ロード
翻訳者菊池 寛
文字遣い新字新仮名
底本 「小學生全集第十八卷 外國文藝童話集(下)」 興文社、文藝春秋社
1929(昭和4)年4月20日
入力者大久保ゆう
校正者The Creative CAT
公開 / 更新2021-07-24 / 2021-06-28
長さの目安約 5 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 兎と亀と、どっちが早いかということは、長い間、動物仲間のうちで問題になっていました。
 あるものは、もちろん兎の方が早いさと言います。兎はあんなに長い耳を持っている。あの耳で風を切って走ったら、ずいぶん早く走れるに違いないと。
 しかしまた、あるものは言うのです。いいや、亀の方が早いさ。なぜって、亀の甲良はおそろしくしっかりしているじゃアないか。あの甲良のようにしっかりと、どこまでも走って行くことが出来るよと。
 そう言って、議論しているばかりで、この問題はいつまでたっても、けりがつきそうもありませんでした。
 そして、とうとう動物たちの間には、その議論から一戦争はじまりそうなさわぎになったので、いよいよふたりは決勝戦をすることになりました。兎と亀とは、五百ヤードの競走を行って、どっちが早いかを、みんなの動物たちに見せるということになりました。
「そんな馬鹿々々しいことはいやですよ。」
と、兎は言いました。が、彼の味方たちは一生懸命兎を説きふせて、ともかくも競走に出ることを承知させました。
「この競走は大丈夫、私の勝ですよ。私は兎みたいにしりごみなどはしませんよ。」
と、亀は言いました。
 亀の味方は、どんなにそれを喝采したことでしょう。

 競走の日は、まもなくやって来ました。敵も味方も、いよいよ勝敗の決する時が近づいたので、口々に大声でどなり立てました。
「私は大丈夫勝ってみせますよ。」
と、亀はまた言いました。
 が、兎は何にも言いませんでした。彼はうんざりして、ふきげんだったのです。そのために、兎の味方の幾人かは彼を見すてて、亀の方につきました。そして、亀の大威張りな言葉を、大声で喝采しました。
 が、兎の味方は、まだだいぶたくさんありました。
「おれたちは、兎がまけるようなことは、どうしたってないと思う。あんなに長い耳を持っているんだから、勝つに違いないよ。」
 彼等[#「彼等」は底本では「彼」]は、口々にそう言っていました。
「しっかり走ってくれ。」
と、亀の味方は言いました。
 そして「しっかり走れ」という言葉を、定り文句のように、皆は口々にくりかえしました。
「しっかりした甲良を持って、しっかり生きている――それは国のためにもなることだ。しっかり走れ。」
 彼等は叫びました。こんな言葉は、動物たちが心から亀を喝采するのでなければ、どうして言うことが出来ましょう。
 いよいよ、二人は出発しました。敵も、味方も、一時にしんとなりました。
 兎は一息に、百ヤードばかり走りぬきました。そして、自分のまわりを見廻してみると、そこには、亀の姿も形も見えないではありませんか。
「何て馬鹿々々しいことだい。亀と競走をするなんて。」
 兎はそう言って、そこへ坐り込んで、競走をやめてしまいました。
「しっかり走れ、しっかり走れ。」
と、誰やらが叫んでいるのが聞…

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