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「天に積む宝」のふやし方、へらし方
「てんにつむたから」のふやしかた、へらしかた
作品ID59489
副題著作権保護期間延長が青空文庫にもたらすもの
ちょさくけんほごきかんえんちょうがあおぞらぶんこにもたらすもの
著者富田 倫生
文字遣い新字新仮名
底本 「インターネット図書館 青空文庫」 はる書房
2005(平成17)年11月15日
入力者富田晶子
校正者雪森
公開 / 更新2019-01-01 / 2019-01-17
長さの目安約 50 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

はじめに


 青空文庫に収録された著作権切れ作品は、誰もが、世界のどこからでも自由に引き落とし、さまざまに活用できる。二〇〇五年一〇月で、その数は四九〇〇点を越えた。当初想定していたパソコンでの利用に加え、作品は、携帯電話やゲーム機、各種の小型電子機器でも読まれるようになった。視覚障碍者は、音声に変換して聞く。点字の元データとしても、ファイルは使われる。一九九七年夏の開設から八年、青空文庫の収録作品数は増え続け、利用の裾野は確実に広がってきた。
 その青空文庫の行く手に、黒雲が広がっている。著作権法は、作者の死後五〇年まで、作品の利用に関する権利を保護すると定めている。この期間を過ぎれば、誰にもことわらずに作品を電子化してインターネットで公開できる。その規定を、七〇年にあらためようとする歯車が回り始めた。
 表現は本来、誰かが触れて、学んだり楽しんだりしても、へることも、損なわれることもない。広く受容されることだけに目標を絞って良いのなら、自由な利用にまかせておけばそれでよい。「ならば、作者が死んでもはや権利保護が創作の励ましとならなくなった時点では、縛りを外して利用を促そう」死後五〇年で権利を切ることに、著作権制度は、こんな期待を込めてきた。その願いは、長く空念仏に終わってきたが、ファイルの複製と移動のコストを激減させるコンピュータ技術と結び付いて、手応えのある現実に変わった。保護期間を七〇年に延ばす選択は、インターネットが普及して、まさに今、花開きつつあるデジタル・アーカイブの可能性を制約してしまう。

1 育ち始めた公有作品テキストの樹


 青空文庫をはじめて紹介したのは、一九九七年夏の、大山だった。
 鳥取の今井書店で「代表社員社長」を名乗る永井伸和さんは、出版人と読者の双方に活用される、「本の学校」を設立したいと考えていた。開校予定は、二〇〇〇年。この目標に向けて、同名のシンポジウムが、一九九五年から五年連続で企画された。第三回となったこの年のテーマは、「本と読書の未来」にすえられ、書籍のデジタル化が論議されると聞いた。
 本の電子化には、興味があった。パソコンで作る本なら、作業は自分で担えるし、複製にもほとんどコストがかからない。電子ガリ版のような、敷居の低い、身近なメディアとなって、出版社、印刷所、取り次ぎ、書店と、何につけ大がかりになる紙の出版からこぼれ落ちる要素を、補えるのではないかと思った。
 一九九〇年代初頭からボイジャーが提供し始めたエキスパンドブックという作成ソフトで、実際に電子本もつくってみた。絶版になった自分の本を仕立て直すところから始め、動画や音、インターネットへのリンクを組み込むといった、新しい工夫にも手を染めた。この年の三月には、電子化でどんな可能性が開けるかをテーマとした、『本の未来』という書籍を、アスキーから出した…

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