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こわいことを知りたくて旅にでかけた男の話
こわいことをしりたくてたびにでかけたおとこのはなし
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2019-12-16 / 2019-11-24
長さの目安約 26 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 あるおとうさんが、ふたりのむすこをもっていました。にいさんのほうはりこうで、頭がよくて、なんでもじょうずにやってのけました。ところが、弟のほうときたら、まぬけで、なんにもわからないし、なにひとつおぼえることもできないというありさまでした。ですから、弟の顔を見るたびに、だれもかれもこういうのでした。
「こういうむすこがいたんじゃ、おやじさんはいつまでたってもたいへんだなあ!」
 こんなわけですから、なにかすることのあるときには、いつもきまって、にいさんがやらされました。けれども、ときには、おそくなってからとか、どうかすると夜中などに、なにかとってきてくれと、おとうさんからいいつかることもあります。そんなとき、墓地とか、あるいはどこかおそろしい場所をとおっていかなければならないようなばあいには、にいさんはいつもこうこたえました。
「いやだ、いやだ、おとうさん。そんなところへはいかないよ。ぞっとする。」
 なぜって、にいさんはこわくてたまらなかったのです。また、夜など、炉ばたで身の毛のよだつような話がでますと、きいているものは「うわあ、ぞっとする」と、よくいいます。
 弟はすみっこにすわって、じぶんもその話をきいているのですが、それがなんのことやら、さっぱり見当がつきません。
「みんな、しょっちゅう、ぞっとする、ぞっとするっていってるが、おれはちっともぞっとなんかしやしねえ。こいつは、きっと、おれにはわからねえことなんだろう。」
 さて、あるときのこと、おとうさんが弟にむかってこんなことをいいました。
「おい、そのすみっこにひっこんでいる小僧、おまえは、もうそのとおり大きく、がっしりした男になった。おまえもなにかひとつ、ならいおぼえて、じぶんでくっていくようにしなくちゃいかん。みろ、にいさんはいっしょうけんめいやってるのに、おまえときたら、まるではしにも棒にもかからん。」
「うん、おとうさん、おれもなにかおぼえたいよ。そうだ、もしできたら、ぞっとするってことをおぼえたいな。そいつは、おれにはちっともわからねえもの。」
 にいさんはこれをきいて、わらいだしましたが、心のなかでひそかに思いました。
(ああ、ああ、弟のやつは、なんて大ばかなんだ。あれじゃ、一生かかったって、ものになりゃしない。三つ児の魂百までっていうからなあ。)
 おとうさんは、ため息をついていいました。
「ぞっとするか、そいつをおぼえるのもいいだろう。だがそんなことをおぼえたって、それではくっちゃいけないぞ。」
 それからまもなく、お寺の役僧がこのうちへたずねてきました。そこでおとうさんは、じぶんの心配を、この役僧に話して、弟むすこはなにをやらせてもだめで、なんにもわからないし、なにひとつ、ならいおぼえることもできないといいました。
「まあ、あなた、考えてもみてください。わたしが、なにをやってくって…

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