えあ草紙・青空図書館 - 作品カード

作品カード検索("探偵小説"、"魯山人 雑煮"…)

楽天Kobo表紙検索

忠義者のヨハネス
ちゅうぎもののヨハネス
作品ID59520
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2019-12-16 / 2019-11-24
長さの目安約 21 ページ(500字/頁で計算)

広告

えあ草紙で読む
▲ PC/スマホ/タブレット対応の無料縦書きリーダーです ▲

find 朗読を検索

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

広告

本文より

 むかし、あるところに、年よりの王さまがおりました。王さまは病気で、もう、この寝床が、どうやらじぶんの臨終の床になるらしい、と思っていました。
 そこで王さまは、
「忠義者のヨハネスをよんでまいれ。」
と、おそばのものにいいつけました。
 忠義者のヨハネスというのは、王さまのいちばんお気にいりの家来でした。この男は、一生のあいだ、ずっと王さまに忠義をつくしてつかえてきましたので、こんなふうによばれていたのです。
 ヨハネスがまくらもとへきますと、王さまはいいました。
「またとない忠義者のヨハネスよ、いよいよわしのさいごのときがちかづいたような気がする。ついては、これといって心配になることもないが、ただむすこのことだけが気がかりなのじゃ。あれは、まだ年もゆかないので、どうしてよいかわからぬこともあろう。ひとつ、おまえが親がわりになって、なにかにつけて、あれの知らなければならないことをおしえてやってはくれまいか。さもないと、わしは安心して目をつぶることができないのじゃ。」
 これをきいて、忠義者のヨハネスはこたえました。
「かならず、王子さまを見すてるようなことはいたしませぬ。わたくしの命にかけましても、きっと忠義をつくしておつかえもうします。」
 すると、年よりの王さまはいいました。
「それをきいて、わしも安心して、やすらかに死んでゆける。」
 それから、さらにことばをつづけて、
「わしが死んだら、王子に城のなかをすっかり見せてやってくれ。へやも、広間も、穴ぐらも、またそこにある宝ものも、のこらず見せてやってもらいたい。だが、長い廊下のいちばんおくのへやだけは見せてやってはくれるな。あのなかには、金のお城の王女の絵がしまってあるのだ。もしも王子が、その絵姿をひと目でも見れば、たちまちその王女へのはげしい愛を心に感じて、気をうしなって、たおれてしまうだろう。そしてその王女のために、おそろしい災難にあうことになろう。だから、そういうことのないように、ようく気をつけてやってもらいたい。」
 そこで、忠義者のヨハネスは、もういちど年とった王さまの手をにぎって、かならずそうすると約束しました。すると、王さまはそれきりものもいわず、頭をまくらにのせて、そのままなくなってしまいました。
 年よりの王さまがお墓にはこばれてしまってから、忠義者のヨハネスはわかい王さまにむかって、じぶんがまえの王さまのおなくなりになるときにお約束したことを話して、
「お約束は、かならずおまもりいたします。そして、お父上さまにたいするのとおなじように、あなたさまにも、命をなげだして、忠義をはげみたいとぞんじます。」
と、もうしました。
 やがて、喪があけたとき、忠義者のヨハネスはわかい王さまにいいました。
「さて、いよいよ、あなたさまのおうけつぎになった財産をごらんになるときがまいりました。お父上…

えあ草紙で読む
find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2024 Sato Kazuhiko