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マリアの子ども
マリアのこども
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2019-09-20 / 2019-08-30
長さの目安約 13 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 ある大きな森のまえに、ひとりの木こりが、おかみさんといっしょに住んでいました。子どもは、三つになる女の子がたったひとりしかありませんでした。
 木こり夫婦はたいへん貧乏で、その日その日のパンもなく、子どもになにを食べさせたらよいか、とほうにくれるほどでした。
 ある朝、木こりは心配ごとに胸をいためながら、森へしごとにでかけました。木こりが森のなかで木を切っていますと、ふいに、背の高い美しい女の人が目のまえにあらわれました。みれば、女の人はぴかぴかかがやく星のかんむりを頭にいただいています。女の人は、木こりにむかっていいました。
「あたしは聖母マリア、幼子キリストの母です。おまえは貧乏で、その日のものにもこまっていますね。あたしのところへおまえの子どもをつれていらっしゃい。あたしがその子をつれていって、めんどうをみてあげましょう。」
 木こりはいわれたとおり、子どもをつれてきて、聖母マリアにわたしました。マリアはその子をつれて、天国にのぼっていきました。子どもはたいへんしあわせでした。さとうのはいったパンを食べたり、あまいミルクをのんだりしました。そして、金の着物をきて、かわいい天使たちといっしょにあそびました。
 やがて、この子が十四になったときのことです。ある日、聖母マリアがこの子をよびよせて、いいました。
「あのね、あたしはこれから長い旅にでます。それで、おまえにこの天国の十三の扉のかぎをあずけておきます。このうちの十二の扉はあけて、なかにあるりっぱなものを見てもいいんですよ。でも、十三ばんめの扉は、この小さなかぎで、あくことはあきますけど、でもあけてはいけません。ようく注意して、あけないようにするんですよ。さもないと、おまえはふしあわせになりますからね。」
 女の子は、きっといいつけをまもります、と約束しました。
 やがて、聖母マリアが旅にでてしまいますと、女の子は天国の住まいの見物をはじめました。まい日ひとつずつ扉をあけているうちに、いつのまにか、十二ばんめの住まいまですっかり見てしまいました。
 どの住まいにも(1)使徒がひとりずついて、大きなみ光につつまれていました。女の子は、ひかりかがやくあたりのすばらしいようすを見て、大よろこびでした。かわいい天使たちも、いつも女の子のあとについていって、女の子といっしょに、うれしがっていました。
 こうして、あとには、いよいよ、あけてはいけないといわれている扉が、ひとつのこっているだけになりました。女の子は、そこになにがかくされているのか、知りたくてなりません。それで、小さい天使たちにむかっていいました。
「あたし、みんなはあけないし、それに、なかへはいったりもしないわ。ただ、そっとあけて、ちょっとすきまからのぞいてみたいの。」
「まあ、いけないわ。」
と、小さな天使たちはいいました。
「それはよくないこ…

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