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三人の糸くり女
さんにんのいとくりおんな
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2020-06-30 / 2020-05-27
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 むかし、あるところに、ひとりの女の子がおりました。この子はなまけもので、糸をつむぐのが大きらいでした。おかあさんがいくらいっても、どうしてもいうことをききませんでした。とうとう、おかあさんはがまんがしきれなくなって、あるとき、腹だちまぎれに女の子をぶちました。すると、女の子はわあ、わあ声をあげて、泣きだしました。
 ちょうどそこへ、お妃さまが馬車にのってとおりかかりました。お妃さまは、泣き声をききつけて、馬車をとめさせました。それから、うちのなかへはいっていって、おかあさんに、
「往来まで泣き声がきこえますが、どうしてそんなにぶつのですか。」
と、たずねました。
 するとおかあさんは、じぶんのむすめがなまけてばかりいることをひとに知られるのをはずかしく思ったものですから、こういいました。
「この子に糸くりをやめさせることができないものでございますから。この子は年がら年じゅう、糸くりをしたがっておりますが、わたくしどもは貧乏で、アサを手にいれることができないのでございます。」
 それをきいて、お妃さまがこたえました。
「あたしは糸くりの音をきくのが大すきです。あの、糸車のブンブンいう音をきくぐらい、たのしいことはありません。おまえのむすめを、いますぐお城へよこしなさい。あたしのところには、アサがたくさんありますから、すきなだけ糸くりをさせてやりましょう。」
 おかあさんは心のそこからよろこびました。こうして、お妃さまは女の子をいっしょにつれていきました。
 お城へつきますと、お妃さまは女の子を上の三つのへやにつれていきました。見れば、どのへやにもそれはそれはみごとなアサが、床から天井までぎっしりつまっています。
「さあ、このアサをつむいでおくれ。」
と、お妃さまがいいました。
「これをのこらずつむいでしまったら、あたしのいちばん上のむすこのおよめさんにしてあげますよ。おまえは貧乏ですけど、そんなことはかまいません。いっしょうけんめいせいだしてはたらくことが、なによりの嫁入りじたくですからね。」
 女の子は、びっくりしてしまいました。だって、こんなにたくさんのアサでは、三百ぐらいのおばあさんになるまで、まい日朝から晩までひっきりなしにつむいだって、とてもつむぎきれはしませんもの。女の子はひとりになりますと、しくしく泣きだしました。そうして、三日のあいだ、手もうごかさずに泣きつづけていました。
 三日めに、お妃さまがやってきました。お妃さまは、まだなんにもつむいでないのを見ますと、ふしぎに思いました。けれども女の子は、
「おかあさんのうちを遠くはなれてまいりましたものですから、それがとてもかなしくって、まだしごとにとりかかれなかったのでございます。」
と、いいわけをしました。
 お妃さまは、それもむりもないと思いましたが、へやをでていくときにこういいました。
「…

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