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十二人兄弟
じゅうににんきょうだい
作品ID59635
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2020-07-20 / 2020-06-27
長さの目安約 14 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 むかしむかし、あるところに、王さまとお妃さまとがおりました。ふたりはたいそうなかよくくらしていました。十二人のお子さんがありましたが、みんなそろいもそろって男の子ばかりでした。
 さて、あるとき、王さまがお妃さまにむかっていいました。
「こんど生まれる子どもが、もし女の子だったら、十二人の男の子はみんな殺してしまおう。そして、その女の子の財産がたくさんになって、この国がその子ひとりだけのものになるようにしてやろう。」
 王さまは、ほんとうに、十二のお棺までもこしらえさせました。そのなかには、すでにかんなくずもつめてあって、ひとつひとつに、死人のための小さなまくらまでもいれてありました。王さまはこれをひとつのへやにはこびこませて、かぎをかけました。そして、そのかぎをお妃さまにわたして、このことはだれにもいってはならぬ、といいわたしました。
 けれども、お妃さまは、それからというものは、一日じゅうすわったきりで、かなしみにしずんでおりました。ですから、いつもお妃さまのそばにばかりくっついているすえっ子の、ベンジャミンという子が、お妃さまにむかってたずねました。この子は、聖書から名をとってベンジャミンとよばれていたのです。
「おかあさま、どうしてそんなにかなしんでいらっしゃるの。」
「ぼうや、ぼうやにはそのわけを話してあげることができないのよ。」
と、お妃さまはいいました。
 けれども、ベンジャミンはいつまでもうるさくせがみます。それで、とうとう、お妃さまは立っていってそのへやをあけ、もうかんなくずまでつまっている十二のお棺を見せてやりました。
「かわいいベンジャミン、このお棺はね、おまえのおとうさまが、おまえと十一人のおにいさまたちのためにこしらえさせたものなのよ。というのは、もしこんど、女の子が生まれれば、おまえたちはみんな殺されて、このなかにいれられて、ほうむられてしまうことになっているのよ。」
 こう話しながら、お妃さまはさめざめと泣きました。すると、男の子はおかあさまをなぐさめて、いいました。
「泣かないでよ、おかあさま。ぼくたち、みんなでたすけあって、にげてしまうから。」
 すると、お妃さまはいいました。
「十一人のおにいさまたちといっしょに、森へにげておいきなさい。そして、森のなかでいちばん高い木を見つけて、だれかひとりがかならずそこにのぼって、見はりをしているようになさい。そうして、このお城の塔のほうをよく見ているんですよ。もしも男の子が生まれれば、白い旗をかかげますからね。そうしたら、みんなでかえっていらっしゃい。でも、もし女の子が生まれたら、赤い旗をかかげますよ。そしたら、できるだけはやくおにげなさい。ああ、どうか神さまがおまえたちをおまもりくださいますように。あたしはまい晩おきていて、おまえたちのためにおいのりをしていますよ。冬は、みんなが…

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