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ラプンツェル
ラプンツェル
作品ID59640
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2020-12-16 / 2023-09-06
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 むかし、あるところに、夫婦が住んでおりました。ふたりは、長い年月のあいだ、子どもをひとりほしいと思っていましたが、どうしてもさずかりませんでした。けれども、ようやく神さまがその願いをかなえてくださりそうなようすが、おかみさんにみえてきました。
 この夫婦のうちのうしろがわには、小さな窓がありました。その窓からは、世にも美しい花や野菜のいっぱいうわっている、きれいな庭が見えました。けれども、その庭は高いへいにとりかこまれていました。しかも、その庭は、たいへんな勢力をもっていて、世間の人たちからおそれられている、ある魔法使いのばあさんのものでしたから、だれひとりそのなかへはいっていこうとするものはありませんでした。
 ある日のこと、おかみさんがこの窓ぎわに立って、庭を見おろしていますと、それはそれはきれいなラプンツェル(チシャ)のうえてある野菜畑が目につきました。みるからに、みずみずしく、青あおとしたラプンツェルです。おかみさんはそれがほしくてたまらなくなって、なんとかして食べたいものだと思いました。
 しかもその思いは、日ましにはげしくなるばかりでした。けれども、それがとても手にいれられないことはわかりきっていましたので、おかみさんはすっかりやせほそって、顔色もあおざめ、見るかげもないようになってきました。
 これを見て、亭主はびっくりして、たずねました。
「おまえ、どうしたんだい。」
「ああ、ああ、うちのうらの庭のラプンツェルが食べられなかったら、あたしゃ死んでしまうよ。」
と、おかみさんはこたえました。
 亭主は、おかみさんがかわいくてなりませんので、
「女房を死なせるくらいなら、あのラプンツェルをとってきてやれ。どうなったって、かまうものか。」
と、思いました。
 そこで亭主は、夕やみにまぎれて、へいをのりこえました。魔法使いの庭にはいるがはやいか、おおいそぎでラプンツェルをひとつかみとって、おかみさんのところへもってきてやりました。
 おかみさんは、それでさっそくサラダをこしらえて、がつがつ食べました。ところが、そのおいしいことといったら、またとありません。そのためおかみさんは、そのつぎの日になりますと、こんどは、まえの日の三ばいもそれがほしくてたまらなくなってしまいました。
 おかみさんをおちつかせるためには、亭主はもういっぺんとなりの庭におりていかなければなりませんでした。そこで、またもや夕やみをねらってでかけていきました。ところが、へいをのりこえたとたん、亭主はびっくりぎょうてんしてしまいました。むりもありません。すぐ目のまえに、魔法使いのばあさんが立っていたのですからね。
「おまえはなんてずうずうしい男なんだい。」
と、魔法使いは亭主をぐいとにらみつけて、いいました。
「わしの庭へはいりこんで、どろぼうみたいに、わしのラプンツェルをぬすんでい…

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