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古書の呪い
こしょののろい
作品ID59726
原題THE BLAST OF THE BOOK
著者チェスタートン ギルバート・キース
翻訳者村崎 敏郎
文字遣い新字新仮名
底本 「〔ブラウン神父の醜聞〕」 HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS、早川書房
1957(昭和32)年3月15日
入力者時雨
校正者sogo
公開 / 更新2021-06-14 / 2021-05-27
長さの目安約 33 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 オープンショウ教授は、もしだれかに心霊主義者だとか心霊主義の信者だとか言われると、ガタンと卓を叩いて、いつもかんしやくをおこすのであつた。しかし、これだけで持前の爆発がおさまるわけではなかつた。というのはもしだれかに心霊主義の否認者だと言われても、やはりかんしやくをおこしたからである。自分の一生をささげて心霊現象を研究してきたのは彼の誇りであつた。そういう心霊現象はほんとうに心霊の現われなのかそれとも単に自然現象の現われなのかそれを自分がどう思つているかについて絶対にヒントをあたえたことがないのも彼の誇りであつた。彼にとつて何よりも楽しかつたのは、熱心な心霊主義者の輪の中に坐つて、自分がどういう風にして霊媒の正体を次々とあばき立て、インチキを次々と見つけ出したかという話を徹底的にくわしく話してきかせることであつた。というのは実際彼は、一度目的物に目をつけたら最後、ひじような探偵能力と洞察力を発揮したし、いつも霊媒には、大いに怪しい目的物として、目をつけたからである。同じ心霊主義のペテン師が三つの違つた変装をしているのを見つけたときの話がある……女になつたり真白な顎ひげの老人になつたり、濃いチョコレート色のバラモン教徒になつたりしていたのであつた。こういう話をくわしく聞かされると、ほんとうの信者たちはかなりおちつかなくなつたが、実はそれが教授のねらいであつた。しかし心霊主義者だつてインチキな霊媒の存在を否定するわけではないから、別に文句は言えなかつた。ただ、なるほど教授のなめらかな話しぶりが、霊媒はみんなインチキだといわんばかりにきこえるのかもしれなかつた。
 しかし頭の単純な無邪気な唯物論者には災あれ(しかも唯物論者は全体的にかなり無邪気で頭が単純である)……連中は、こういう話の傾向から勝手に想像して、幽霊は自然の法則にそむくとか、そんな物は古い迷信にすぎないとか、すべてがたわ言か、さもなかつたらでたらめだとかいうふうに議論を進めるのである。こういう相手には教授は、ふいにすべての科学の砲火をあべこべに向けかえて、みじめな合理主義者が一度も聞いたことがないような、疑う余地のない事件や説明のつかない現象を一斉にならべ立てて、相手をなぎはらうのであつた……あらゆるこまかい事実や日付を数えあげ、自然の説明を企てたがどうにもならなかつた実例をいくつも弁じ立てた……実際何もかも弁じ立てたが、ただ彼ジョン・オリバー・オープンショウが霊を信じているのかいないのかという問題だけにはふれなかつた。そしてそれはいまだに心霊主義者も唯物論者も見つけ出したといつて自慢するわけにはいかないのであつた。
 オープンショウ教授は、淡黄色のライオンのような髪の毛と、催眠術をかけているような青い眼をした痩せた姿で、ホテルの表の階段の上で、友人のブラウン神父と二言三言とりかわしていた。このホテ…

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