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とけない問題
とけないもんだい
作品ID59728
原題THE INSOLUBLE PROBLEM
著者チェスタートン ギルバート・キース
翻訳者村崎 敏郎
文字遣い新字新仮名
底本 「〔ブラウン神父の醜聞〕」 HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS、早川書房
1957(昭和32)年3月15日
入力者時雨
校正者sogo
公開 / 更新2021-06-14 / 2021-05-27
長さの目安約 38 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 この変てこな事件――ブラウン神父が出合つた多くの事件の中でも或る意味で一番変てこな事件が起つたのは、たまたま例のフランス人の友達フランボウが犯罪商売から隠退して、犯罪調査者の商売を大元気で盛大に開業していたときであつた。偶然またフランボウは、泥棒としても泥棒捕獲者としても、どちらかといえば宝石泥棒を専門にしていて、この問題については、宝石の鑑定およびそれと同様に実際的な宝石泥棒の鑑定という点で、双方ともエクスパートだと認められていた。そこでこの物語がはじまる特別の日の朝、フランボウが友達の坊さんに電話をかけたのは、この問題についての彼の特殊な知識と、それだからこそ依頼を受けた特殊な任務に関係することであつた。
 ブラウン神父は、たとえ電話にしても、昔の友達の声を聞いたので大喜びだつた。しかしふつうは、そして特にその特別の瞬間は、ブラウン神父は電話にウンザリしきつていた。彼は相手の顔をよく見て親しい気分で話すほうが好きであつたし、それにそういう風にしないで言葉のやりとりだけでは、特にまつたく未知の相手の場合などは、大へん誤解を生じやすいことをよく知つていた。ところが、その特別の朝にかぎつて、まつたく未知の連中が群をなしてなんだかわけのわからない言葉のやりとりを耳元でワンワンわめき立てていたようであつた……電話は悪魔にとりつかれたようにつまらない事ばかりならべ立てた。たぶん一番はつきりしていた声は、ブラウンの教会に掲示してある正規の料金を支払うから殺人と泥棒の正規の免許状を出してもらえまいかと頼んできた声であつた。この未知の相手は、そんなわけにはいかないと言われると、うつろな笑い声をあげて話を打ち切つたところをみると、やはり納得が行かなかつたものと思われる。それから、取り乱してかなりしどろもどろの女の声が電話をかけてきて、某ホテルへすぐ来ていただきたいと、懇願した……ブラウンも聞いたことのある宿屋で、隣接の大寺院のある町へ行く途中四十五マイルほどの所にあつた……その依頼があつてから、すぐまた続いて同じ声が、いつそう取り乱してしかもいつそうしどろもどろに、もうどうでもよくなりましたからおいでにならないでくださいと、矛盾したことを言つた。それから合いの手に或る通信社が、某映画女優が男性の口ひげについて話したことについて何かご意見はありませんかと質問してきた。そして最後にしかも三度目の電話が例のホテルにいる取り乱したしどろもどろの婦人からかかつてきて、けつきよく来ていただきたいと、言うのであつた。ブラウンはぼんやり想像した……これはだれかのさしずのままにぼんやり考えを変えている場合にありがちのためらつたりあわてたりしている証拠であつた。しかしこの連続電話の結末をつけるようにフランボウの声が、これからすぐ朝飯の席に押しかけるからと、元気よく高圧的に言つてきたときは、正…

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