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村の吸血鬼
むらのヴァムプ
作品ID59730
原題THE VAMPIRE OF THE VILLAGE
著者チェスタートン ギルバート・キース
翻訳者村崎 敏郎
文字遣い新字新仮名
底本 「〔ブラウン神父の醜聞〕」 HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS、早川書房
1957(昭和32)年3月15日
入力者時雨
校正者sogo
公開 / 更新2022-05-02 / 2022-04-27
長さの目安約 39 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 丘の細道の曲り角に、二本のポプラがピラミッドのようにそびえ立つて、そのためにホンの一団の家のかたまりに過ぎない小さなポタス・ポンドの村がなおさら小さく見えていたが、ここを或る時歩いていたのは、大へん目立つた型と色の衣裳をつけた男であつた……あざやかな深紅色の外套を着て純白の帽子を真黒な[#「真黒な」は底本では「直黒な」]神々しいほどの巻き毛の上にかたむけていた。巻き毛の先きはバイロン風のはなやかな頬ひげに続いていた。
 なぜその男がこういう風変りな古風の服を着ていたか……しかもそれを当世風の気取つたような所さえあるかつこうで着ていたか……という謎は、最後に彼の不幸な運命の秘密を解決するときに解決された多くの謎の一つに過ぎなかつた。ここでの要点は、その男がポプラを通り過ぎたとき消えてしまつたように見えたことである……まるで青白い夜明けの光がひろがつてきた中に溶けこんでしまつたか、それとも朝風に吹き飛ばされてしまつたかのようであつた。
 男の死体が四分の一マイルほど離れた所で発見されたのはわずか一週間ほど後であつた……お屋敷と呼ばれている、よろい戸を閉めきつた、ヒョロ高い家に通じる、段庭の急な岩山の上で打ちくだかれていた。この男が姿を消す直前に、どうやらだれかそばにいた連中と口論して、特にこの村を「みじめなつまらん小村」と言つて罵つている声を、偶然立ち聞きした者があつた。そこでこの男は土地の若者の極端に熱烈な愛郷心をそそり立てたあげくその犠牲になつたものと、想像された。少なくとも土地の医者は、頭蓋骨に死の原因となるほど猛烈な一撃を受けていると、証言した……尤もおそらく頭の太い棒か、農民が武器に使つた棍棒ようの物で受けた一撃にすぎないということであつた。これは、かなり野蛮な田舎の若い衆が襲撃したのではないかという考え方に、実にうまくあてはまつた。しかし特定の若者をさぐり出す手段についてはだれにも見当がつかなかつた。そこで死後審問は、未知の人物による殺人という評決を答申した。
 一二年後この問題が妙な具合に再開された……この村に一連のでき事があつて、そのためにマルボロ博士(この人が親友連中にマルベリ<桑の実>と呼ばれていたのは、ありがたくない肥満した体とかなり紫色の顔色が豊かなみずみずしい物を連想させるので、それをうまくほのめかしたのであつた)という医者が、この種の問題でたびたび相談したことのある一人の友人をつれて、ポタス・ポンドまで汽車の旅をすることになつた。この医者は、やや酒好きらしい重々しい外見に似合わず、鋭い目を持つていて、ほんとうに大へん非凡な分別のある男であつた。医者はその分別ぶりを、ずつと以前或る毒殺事件で知り合つたブラウンという小がらな坊さんに相談するときにも、はつきり見せているつもりであつた。小がらな坊さんは医者の向側に腰をかけて、赤ん坊のように…

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