えあ草紙・青空図書館 - 作品カード

作品カード検索("探偵小説"、"魯山人 雑煮"…)

三枚のヘビの葉
さんまいのヘビのは
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2020-07-20 / 2020-06-27
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)
えあ草紙で読む
▲ PC/スマホ/タブレット対応 ▲

find 朗読を検索

本の感想を書き込もう web本棚サービスブクログ作品レビュー

find Kindle 楽天Kobo Playブックス

青空文庫の図書カードを開く

find えあ草紙・青空図書館に戻る

amazon.co.jp

本文より

 むかしむかし、ひとりのまずしい男がおりました。その男は、じぶんのたったひとりのむすこさえも、やしなえないようになってしまいました。そこで、むすこがいいました。
「おとうさん、だいぶくらしもくるしくなってきましたね。わたしはおとうさんの重荷になるばかりです。いっそ、家をでて、じぶんでなんとかしてパンをかせぐようにしたいと思います。」
 そこで、おとうさんはむすこのしあわせをいのって、胸のつぶれるようなかなしい思いで、むすことわかれました。
 ちょうどそのころ、ある強い国の王さまが戦争をはじめました。若者はこの王さまにつかえて、戦場にでかけました。若者が敵のまえまできたとき、ちょうどたたかいがはじまりました。そのあぶないことといったらありません。鉄砲のたまが、豆のようにバラバラふってきて、味方のものはあっちでもこっちでも、ばったばったとたおれるありさまです。そのうちに、隊長までも戦死してしまいました。ですから、のこったものたちはあわててにげだしました。そのとき、若者がすすみでて、みんなに勇気をつけて、大声によばわりました。
「おれたちの生まれた国をほろぼすな。」
 それをきいて、ほかのものたちも若者のあとにしたがいました。若者は敵のなかにとびこんで、さんざんに敵をやっつけました。王さまは、たたかいに勝つことができたのはこの若者ひとりのおかげだったときいて、若者をだれよりもとりたてて、たくさんの宝ものをあたえたうえ、国いちばんの家来にしました。
 王さまには、ひとりのお姫さまがありました。お姫さまはたいへん美しいかたでしたが、ただ、ひどくかわっていました。なにしろ、このお姫さまが結婚しようと思う相手の人は、もしもお姫さまがさきに死んだばあい、お姫さまといっしょに生きうめにされてもかまわないと約束できる人でなければだめだという、かたい誓いをたてていたのですからね。
「あたしを心のそこからすいているのなら、あたしが死んだのち、どうして命がいりましょう。」
と、お姫さまはいうのでした。
 そのかわり、お姫さまもおんなじことをするつもりでした。つまり、もしご主人のほうがさきに死ねば、お姫さまもいっしょにお墓のなかへはいる気でいたのです。いままでのところは、このかわった誓いをききますと、お姫さまに結婚をもうしこもうと思っていた人も、みんなおそれをなしてしまうのでした。
 ところがこの若者は、お姫さまの美しさにすっかり心をうばわれてしまって、ほかのことはなんにも考えず、お姫さまをいただきたい、と、王さまのもとにねがいでました。
「おまえは約束しなければならぬことがあるのだが、それも知っているのかね。」
と、王さまがたずねました。
「もしもわたくしがお姫さまよりあとまで生きておりましたら、お姫さまといっしょに墓のなかへはいらなければなりません。」
と、若者はこたえていいました…

えあ草紙で読む


find えあ草紙・青空図書館に戻る

© 2020 Sato Kazuhiko