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白ヘビ
しろヘビ
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2020-08-14 / 2020-07-27
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

 いまからずっと、むかしのこと、あるところにひとりの王さまが住んでおりました。その王さまのかしこいことは、国じゅうに知れわたっていました。とにかく、王さまの知らないことは、なにひとつないのです。どんなにないしょのことでも、空をつたわって、王さまのもとに知れるのではないかと思われるほどだったのです。
 ところで、王さまにはかわった習慣がひとつありました。それは、まい日お昼の食事がすんでからのことでした。食事のおさらがすっかりさげられて、その場にだれもいなくなりますと、ひとりの信用のあつい召使いが、いつもきまって、なにかもうひとさらもってくることになっていたのです。けれども、それにはふたがしてありますので、その召使いでさえも、おさらのなかになにがはいっているのか知りませんでした。それに、王さまはひとりきりにならないうちは、けっしてふたをあけて、食べようとはしませんので、だれひとりその中身を知っているものはありませんでした。
 こうしたことが、長いあいだつづきました。ある日のこと、おさらをさげた召使いが、どうにも中身を知りたくなって、そのままそのおさらをじぶんのへやにもっていきました。召使いは扉を注意ぶかくしめてから、ふたをとってみました。と、なかには一ぴきの白ヘビがはいっています。召使いはそれをひと目見ますと、どうしても食べてみたくなりました。そこで、白ヘビをほんのすこし切って、口にいれました。
 ところが、どうでしょう、それが舌にさわったとたん、窓のそとから、やさしい声で、ふしぎな、ひそひそ話をしているのがきこえてきたではありませんか。そばへいって、耳をすましてみますと、それはスズメたちがあつまって、野原や森で見てきたさまざまのことを、たがいに話しあっているのでした。つまり、この召使いはヘビを食べたおかげで、動物たちのことばがわかるようになったのです。
 さて、ちょうどこの日に、お妃さまのいちばん美しい指輪がなくなりました。ところでこの召使いは、どこへでも出入りをゆるされていましたので、この男がぬすんだのではないかといううたがいがかけられました。
 王さまは召使いをよびだして、きびしくしかりつけました。そして、もしあしたまでに犯人の名をいうことができなければ、おまえを犯人と考えて罰するぞ、と、おどかしました。召使いが、じぶんに罪のないことをいくらもうしたてても、どうにもなりませんでした。召使いは、しかたなくそのままひきさがりました。
 召使いは、不安と心配で胸をいためながら、中庭におりて、どうしてこの災難をのがれたものだろうかと、いっしょうけんめい考えていました。そのとき、ふと見ますと、そばの小川の岸にカモたちがのんびりならんで、やすんでいました。カモたちは、くちばしで羽根をきれいにそろえながら、うちとけた話をしていました。
 召使いは立ちどまって、その話にじ…

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