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わらと炭と豆
わらとすみとまめ
作品ID59747
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2020-08-31 / 2020-07-27
長さの目安約 4 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 ある村に、ひとりのまずしいおばあさんが住んでいました。おばあさんは豆をひとさらあつめて、煮ようと思いました。そこで、おばあさんはかまどに火をおこす用意をしました。そして、火がはやくもえつくように、ひとつかみのわらに火をつけました。
 おばあさんが豆をおなべにあけるとき、知らないまに、ひとつぶだけおばあさんの手からすべりおちました。その豆は、床の上のわらのそばに、ころころところがっていきました。すると、すぐそのあとから、まっかにおこっている炭がかまどからはねだして、このふたりのところへやってきました。
 すると、わらが口をきいて、いいました。
「おまえさんたち、どこからきたんだね。」
 炭がこたえました。
「おれは、うまいぐあいに、火のなかからとびだしてきたんだよ。こうでもしなかったら、まちがいなしにおだぶつさ。もえて、灰になっちまうにきまってるもの。」
 こんどは、豆がいいました。
「あたしもぶじににげてきたわ。あのおばあさんにおなべのなかへいれられようものなら、ほかのお友だちとおんなじように、なさけようしゃもなく、どろどろに煮られてしまうところだったのよ。」
「おれだって、にたりよったりのめにあってるのさ。」
と、わらがいいました。
「おれの兄弟たちは、みんなあのばあさんのおかげで、火をつけられて、煙になっちまったんだ。ばあさんたら、いっぺんに六十もつかんで、みんなの命をとっちまったのさ。おれだけは、運よくばあさんの指のあいだからすべりおちたからいいけどね。」
「ところで、おれたちはこれからどうしたらいいだろう。」
と、炭がいいました。
「あたし、こう思うのよ。」
と、豆がこたえました。
「あたしたちは運よく死なずにすんだんですから、みんなでなかよしのお友だちになりましょうよ。そして、ここでもう二度とあんなひどいめにあわないように、いっしょにそとへでて、どこかよその国へでもいきましょう。」
 この申し出は、ほかのふたりも気にいりました。そこで三人は、つれだってでかけました。
 やがて、三人は、とある小さな流れのところにやってきました。見ると、橋もなければ、わたし板もありません。三人は、どうしてわたったものか、とほうにくれてしまいました。
 わらがうまいことを思いついて、いいました。
「おれが横になって、ねころんでやろう。そうすれば、おまえさんたちは橋をわたるように、おれのからだの上をわたっていけるというもんだ。」
 こういって、わらはこっちの岸からむこうの岸まで、からだを長ながとのばしました。すると、炭は生まれつきせっかちだったものですから、このできたばかりの橋の上を、むてっぽうに、ちょこちょこかけだしました。ところが、まんなかまできて、足の下で水がざあざあながれる音をききますと、どうにもこわくなって、そこに立ちすくんでしまいました。もうひと足もすすむこ…

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