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「テーブルよ、ごはんの用意」と、金貨をうむロバと、「こん棒、ふくろから」
「テーブルよ、ごはんのようい」と、きんかをうむロバと、「こんぼう、ふくろから」 |
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作品ID | 59834 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社 1980(昭和55)年6月 |
入力者 | sogo |
校正者 | チエコ |
公開 / 更新 | 2023-09-20 / 2023-09-14 |
長さの目安 | 約 26 ページ(500字/頁で計算) |
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むかしむかし、ひとりの仕立屋さんがおりました。仕立屋さんは三人のむすこと、それから、ただ一ぴきのヤギをもっていました。
ところでこのヤギは、そのお乳でみんなをやしなっていたのですから、よいえさをもらわなければなりません。それで、まい日草原へつれだしてもらいました。むすこたちも、じゅんじゅんにこの役めをやっていました。
あるとき、いちばん上のむすこが、それはそれはみごとな草のはえている墓地にヤギをつれていって、草を食べさせたり、そこらをとびまわらせたりしました。
やがて日がくれて、家へかえるころになりましたので、いちばん上のむすこは、
「ヤギや、おなかはいっぱいかい。」
と、たずねました。
すると、ヤギはこたえていいました。
おなかはいっぱいだ
もうひとっ葉もいらないよ メエ メエ
「それじゃ、うちへかえろう。」
と、むすこはいいました。
それから、むすこはヤギのつなをつかんで、ヤギ小屋のなかへつれていき、そこにしっかりとつなぎました。
「どうだな、ヤギはえさをたくさん食べたか。」
と、年とった仕立屋さんがたずねました。
「ええ、ヤギはおなかがいっぱいで、もうひとっ葉もいらないんですって。」
と、いちばん上のむすこがこたえました。
けれども、おとうさんはそれをじぶんでたしかめようと思って、ヤギ小屋へおりていきました。そして、かわいいけものをなでながら、
「ヤギや、おまえは、ほんとうにおなかがいっぱいかい?」
と、きいてみました。
すると、ヤギはこたえました。
なんでいっぱいになるもんかい
お墓の上をとんでいただけで
葉っぱなんか一枚もありゃあしなかった メエ メエ
「なんてことだ。」
と、仕立屋さんはさけびざま、かけあがっていって、むすこにむかって、
「やい、このうそつきめ、ヤギは腹がいっぱいだなんていいやがって、ひぼしにしたじゃないか。」
と、いいました。そして、仕立屋さんは腹だちまぎれに、壁からものさしをとって、むすこをピシピシうって、家から追いだしてしまいました。
そのつぎの日は、二ばんめのむすこの番でした。このむすこは、庭の生け垣のところに、いい草ばかりはえている場所をさがしだしました。ヤギはその草をきれいに食べてしまいました。夕がた、むすこは家へかえろうと思って、ヤギにきいてみました。
「ヤギや、おなかはいっぱいかい。」
するとヤギはこたえていいました。
おなかはいっぱいだ
もうひとっ葉もいらないよ メエ メエ
「それじゃ、うちへかえろう。」
と、むすこはいいました。
それから、むすこはヤギを家へひっぱっていって、ヤギ小屋のなかにいれて、しっかりつなぎました。
「どうだな、ヤギはえさをたくさん食べたか。」
と、年とった仕立屋さんがたずねました。
「ええ、ヤギはおなかがいっぱいで、もうひとっ葉もいらないんですって。」
と、二ばんめ…