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三つのことば
みっつのことば
作品ID59843
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2022-06-06 / 2022-05-27
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 むかし、スイスの国に、ひとりの年をとった伯爵が住んでおりました。伯爵にはむすこがひとりしかありませんでしたが、そのむすこはばかで、なにひとつおぼえることができないありさまでした。
 そこで、あるとき、おとうさんがいいました。
「これ、せがれ、わしはおまえの頭になにひとついれてやることができん。そこで、こんどはひとつ、わしの思っていることをやってみたい。おまえはこの土地をはなれなければいかん。つまり、わしはおまえを、ある名高い先生にあずけようと思うのだ。その先生が、おまえをなんとかしてくださるだろう。」
 こうして、若者は知らない町にやられて、その先生のところにまる一年おりました。一年たって、むすこはかえってきました。そこで、おとうさんはたずねました。
「どうだ、せがれ、なにをおぼえてきた。」
「おとうさん、ぼくは犬のことばをおぼえてきました。」
と、むすこはこたえました。
「ああ、なんということだ。」
と、おとうさんは思わず大きな声でいいました。
「おまえのおぼえてきたのは、それだけなのか。では、おまえをほかの町へやって、べつの先生にあずけるとしよう。」
 こうして、若者はまたつれていかれました。そして、この先生のところにも、やっぱり一年いました。むすこがかえってきますと、おとうさんがまたたずねました。
「せがれ、なにをおぼえてきた。」
 すると、むすこはこたえました。
「おとうさん、ぼくは鳥のことばをおぼえてきました。」
 それをきいて、おとうさんはかんかんにおこって、いいました。
「このろくでなしめ、だいじな時間をつぶして、なにひとつおぼえてきもしない。よくそれで、はずかしくもなく、わしのまえへこられたものだ。わしはおまえを三人めの先生のところへやる。だがこんどもなにひとつおぼえてこないようだったら、わしはもうおまえの親ではないぞ。」
 むすこは三人めの先生のところにも、まる一年おりました。かえってきますと、おとうさんがたずねました。
「せがれ、なにをおぼえてきた。」
 すると、むすこがこたえていいました。
「おとうさん、ことしはカエルのことばをおぼえてきましたよ。」
 これをきいたとたん、おとうさんはかんかんに腹をたてて、いすからとびあがり、家来たちをよんで、いいました。
「この男は、もうわしのむすこではない。わしはこいつを追いだしてやる。おまえたちはこいつを森へつれだして、殺してしまえ。いいか、しかともうしつけたぞ。」
 家来たちは、むすこをつれだしはしましたが、いざ殺すとなると、かわいそうで、とてもそんなことはできません。で、そのまま、むすこをにがしてやりました。そのかわり、家来たちは子ジカの舌と目を切りとって、それをむすこを殺した証拠の品として、伯爵のところへもってかえりました。
 そこで、若者は旅にでかけました。しばらくして、とあるお城のまえ…

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