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りこうもののエルゼ
りこうもののエルゼ
作品ID59844
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2022-01-04 / 2021-12-27
長さの目安約 10 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 あるところに、ひとりの男がおりました。男には、ひとりのむすめがありました。このむすめは〈りこうもののエルゼ〉という名まえでした。
 さて、このむすめがすっかり大きくなりましたので、おとうさんはおかあさんにいいました。
「もうむすめをよめにやろうじゃないか。」
 すると、おかあさんはこたえました。
「ええ、およめにもらいたいっていう人がきましたらね。」
 やがて、遠くのほうから、ハンスという人がやってきて、エルゼをおよめさんにもらいたいといいました。ただ、このひとは、りこうもののエルゼがみんなのいうとおり、ほんとうにりこうならもらうけれど、ということでした。
「いや、それなら、このむすめはまったくりこうですよ。」
と、おとうさんがいいました。
 おかあさんはおかあさんで、
「まあ、この子は風が通りをふきすぎるのが見えたり、ハエがせきをするのもきこえるんですからね。」
と、もうしました。
「そうですか。」
と、ハンスがいいました。
「エルゼさんがほんとうにりこうでなけりゃ、わたしはもらいませんよ。」
 みんなは食卓につきました。やがて、食事がおわりますと、おかあさんがいいました。
「エルゼや、地下室へいって、ビールをもってきてちょうだい。」
 そこで、りこうもののエルゼは壁からビール入れをとって、地下室へおりていきましたが、たいくつしのぎに、とちゅうで、ふたをいきおいよくパクンパクンとならしました。
 地下室へはいりますと、エルゼは小さいいすをもちだして、それをたるのまえにおきました。つまり、こうすれば、からだをまげる必要がありませんから、背中のいたむようなこともありませんし、またもうひとつには、思いがけないわざわいをこうむることもないのです。
 それから、エルゼはビール入れをじぶんのまえにおいて、せんをひねりました。ビールが入れもののなかにながれこんでいるあいだも、エルゼは目をあそばせておくようなことはしませんでした。壁について、だんだん上のほうを見てゆきました。こうして、あっちこっちとながめているうちに、じぶんの頭のま上に十字のとび口がつきささっているのが目にとまりました。これは、左官屋さんがうっかりそこにつきさしたまま、わすれていったものなのです。
 これを見ますと、りこうもののエルゼは泣きだしました。そして、
「あたしがハンスさんのおよめになって、やがて子どもが生まれて、その子が大きくなる。そして、あたしたちはその子をこの地下室へよこして、ビールをつぎださせるとする。そうすると、あの十字のとび口がその子の頭の上におちてきて、その子を殺してしまうわ。」
と、いいました。
 エルゼはそこにすわりこんで、やがておこるふしあわせのことを思って、せいいっぱいの声をはりあげて泣きさけびました。
 上にいる人たちは、飲みものを待っていましたが、りこうもののエルゼは、…

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