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ハツカネズミと小鳥と腸づめの話
ハツカネズミとことりとちょうづめのはなし |
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作品ID | 59846 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 矢崎 源九郎 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社 1980(昭和55)年6月 |
入力者 | sogo |
校正者 | チエコ |
公開 / 更新 | 2021-03-22 / 2021-02-26 |
長さの目安 | 約 5 ページ(500字/頁で計算) |
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むかしむかし、ハツカネズミと小鳥と腸づめがなかまになって、一家をもちました。長いあいだ、みんなはいいぐあいになかよくくらして、財産もだいぶこしらえました。
小鳥のしごとは、まい日森のなかをとびまわって、たきぎをとってくることでした。ハツカネズミは水をくんで、火をおこし、おぜんごしらえをする役めです。それから、腸づめは煮たきをすることになっていたのです。
しあわせすぎるものは、なにかかわった、あたらしいことをやってみたがるものです。そんなわけで、ある日、小鳥はとちゅうでほかの鳥にであって、じぶんの身のすばらしいしあわせを話して、さかんにじまんしました。ところが、その鳥は、
「おまえはばかだな。おまえはほねのおれるしごとをしているのに、ほかのふたりはうちでらくをしているじゃないか。」
と、小鳥をこばかにしていいました。
なるほど、そういわれれば、たしかにそのとおりです。だって、ハツカネズミは火をおこして、水をくんでしまえば、あとはじぶんのへやにはいって、おぜんごしらえをしろといわれるまでは、やすんでいられます。腸づめは土なべのそばにいて、食べものの煮えぐあいを見ていればいいのです。そうしているうちに、ごはんどきになったら、おかゆか、煮もののなかを、せいぜい四回もころがりまわれば、それで油っけも塩っけもうまくついて、したくもできあがりというわけです。そこへ小鳥がかえってきて、おもたい荷をおろすのです。そこで、みんなはおぜんについて、やがてごはんがすみますと、あしたの朝までぐっすりねむります。なるほど、まことにもってすばらしいくらしです。
小鳥は、ほかの鳥に知恵をつけられたものですから、つぎの日は、
「ぼくは、もうずいぶん長いあいだ下男しごとをやってきた。まるで、きみたちにばかにされていたようなもんだ。ここらでひとつ役めをかえて、ちがったやりかたをしてみようじゃないか。」
と、いって、どうしても森へいこうとはしませんでした。
ハツカネズミばかりか腸づめまでが、小鳥にいってきてくれとしきりにたのみましたが、小鳥はなんとしてもききいれませんでした。そこで、とにかくやってみなくてはというわけで、みんなでくじをひいてみました。すると、腸づめにくじがあたりましたので、腸づめがたきぎをとりにいくことになりました。そして、こんどは、ハツカネズミが料理番になり、小鳥が水をくむ役にまわりました。
さてそれで、どんなことになったでしょうか。
腸づめは森をさして、でかけていきました。いっぽう、小鳥は火をおこして、ハツカネズミはふかいおなべの用意をしました。こうして、腸づめがあしたのたきぎをもってかえってくるのを、待つばかりになりました。
ところが、その腸づめはいつまでたってもかえってきません。それで、ふたりは、腸づめがどうかしたのではないかと心配になってきました。そこで…