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ブレーメンの音楽師
ブレーメンのおんがくし
作品ID59847
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者矢崎 源九郎
文字遣い新字新仮名
底本 「グリム童話集(1)」 偕成社文庫、偕成社
1980(昭和55)年6月
入力者sogo
校正者チエコ
公開 / 更新2021-02-24 / 2021-01-27
長さの目安約 9 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 ある人が一ぴきのロバをもっていました。そのロバは、長い年月のあいだ、しんぼう強く、背中にふくろをしょっては、水車小屋まではこんでいました。でも、そのうちに、力もなくなってきて、だんだんこのしごとができないようになりました。
 そこで、主人は、ここらで、ロバにかいばをやるのはやめるとしよう、と、考えました。
 ところが、ロバのほうでも、じぶんにぐあいのよくないようすを見てとって、さっさと主人のうちをにげだしました。そして、ブレーメンという町にむかって歩いていきました。ロバの考えでは、その町にいけば、町の音楽隊にやとってもらえるかもしれないと、思ったのです。
 しばらくいきますと、一ぴきの猟犬が道にねころがって、口をあけて、ハア、ハア、やっていました。そのようすは、さんざん走りまわったために、すっかりくたびれてしまったとでもいうようでした。
「おい、あばれんぼう、きみはどうしてそんなに、ハア、ハア、やってるんだ。」
と、ロバはたずねました。
「いや、じつはね。」
と、犬がいいました。
「おれもすっかり年をとっちまって、からだが日ましによわってきたのさ。で、狩りにでかけても、むかしのようにかけまわれやしない。だもんだから、主人がおれを殺そうとするんだ。それで、あわててにげだしてきたってわけなんだが、さてこれからさき、どうやってめしにありついたもんだろうなあ。」
「そんなら、どうだい。」
と、ロバはいいました。
「おれは、これからブレーメンへいって、あの町の音楽師になろうと思っているところだが、きみもいっしょにいって、音楽隊にやとってもらったら。おれはギターをひくから、きみはたいこをたたきなよ。」
 それをきいて、犬はすっかりよろこびました。そこで、二ひきはいっしょにでかけました。
 すこし歩いていきますと、一ぴきのネコが道ばたにすわりこんで、三日も雨にふりこめられたような顔をしていました。
「おや、ひげなでばあさん、なにをそんなにこまってるんだね。」
と、ロバはたずねました。
「命にかかわることだもの、のんきにかまえちゃいられないさ。」
と、ネコはこたえました。
「わたしゃ、このとおり年をとっちまったし、歯もきかなくなった。それに、ネズミなんかを追いまわすよりも、ストーブのうしろにでもすわりこんで、のどをゴロゴロやってるほうがすきなのさ。ところがそうすると、うちのおかみさんは、わたしを川のなかへぶちこもうっていう気をおこしたんだよ。それで、わたしゃ、いそいでとびだしてきたんだけど、といって、うまい知恵もなし、これからどこへいったらいいだろうねえ。」
「おれたちといっしょに、ブレーメンへいこうじゃないか。おまえさんは夜の音楽がおとくいだから、町の音楽隊にやとってもらえるよ。」
 ネコは、それはいい考えだと思いましたので、みんなといっしょにでかけました。
 にげだし…

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