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としよりのお祖父さんと孫
としよりのおじいさんとまご |
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作品ID | 59849 |
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著者 | グリム ヴィルヘルム・カール Ⓦ / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール Ⓦ |
翻訳者 | 金田 鬼一 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「完訳 グリム童話集(二)〔全五冊〕」 岩波文庫、岩波書店 1979(昭和54)年8月16日 |
入力者 | かな とよみ |
校正者 | noriko saito |
公開 / 更新 | 2021-05-16 / 2022-03-06 |
長さの目安 | 約 2 ページ(500字/頁で計算) |
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むかし昔、あるところに石みたようにとしをとったおじいさんがありました。おじいさんは、目はかすんでしまい、耳はつんぼになって、膝は、ぶるぶるふるえていました。おじいさんは、食卓にすわっても、さじをしっかりもっていられないで、スープを食卓布の上にこぼしますし、いちど口に入れたものも、逆もどりして流れでるようなありさまでした。
おじいさんのむすこと、むすこのおかみさんは、それを見ると、胸がわるくなりました。そんなわけで、おおどしよりのお祖父さんは、とうとう、ストーブのうしろのすみっこへすわらされることになりましたし、むすこ夫婦は、おじいさんの食べるものを、素焼きのせともののお皿へ盛りきりにして、おまけに、おなかいっぱいたべさせることもしませんでした。おじいさんはふさぎこんで、おぜんのほうをながめました、おじいさんの目は、うるみました。
あるときのこと、おじいさんのぶるぶるふるえている手は、お皿をしっかりもってることができず、お皿はゆかへ落ちて、こなみじんにこわれました。わかいおかみさんは、こごとを言いましたが、おじいさんはなんにも言わずに、ためいきをつくばかりでした。
おかみさんは、銅貨二つ三つで、おじいさんに木の皿を買ってやって、それからは、おじいさんはそのお皿で食べることにきめられました。
三人がこんなふうに陣どっているとき、四歳になる孫は、ゆかの上で、しきりに小さな板きれをあつめています。
「なにをしているの?」と、おとうさんが、きいてみました。
「お木鉢をこしらえてるの」と、男の子が返事をしました、「ぼうやが大きくなったら、このお木鉢でおとうちゃんとおかあちゃんに食べさせたげる」
これを聞くと、夫婦は、ちょっとのあいだ顔を見あわせていましたが、とうとう泣きだしました。そして、すぐ、としよりのお祖父さんを食卓へつれてきて、それからは、しょっちゅういっしょにたべさせ、おじいさんがちっとぐらい何かこぼしても、なんとも言いませんでした。