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琉球に学ぶべきもの
りゅうきゅうにまなぶべきもの
作品ID59856
著者志賀 重昂
文字遣い新字旧仮名
底本 「沖縄文学全集 第14巻 記録・証言Ⅰ」 国書刊行会
2010(平成22)年5月10日
初出「大阪毎日」1906(明治39)年2月11日~2月15日
入力者きゅうり
校正者持田和踏
公開 / 更新2023-04-06 / 2023-03-27
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より




[#挿絵]――絶海孤島の教育 渡名喜島は沖縄島を離る、三十浬、周廻二里八町の弾丸黒子のみ。島人往々食糧に欠乏し蘇鉄の澱粉を製す。其製作法たる蘇鉄の幹の皮を剥ぎ輪切りにし乾燥し水に浸し、捏ね、晒し、辛苦容易に非ず。小学校の教師湯を注ぎ予に供して曰く「本島と一個月一回の汽船航通あれども風濤に依り時に汽船の寄泊せざることあり。今回も二個月間汽船到来せざりしが故に全島茶に欠けり。湯を供する失礼を恕せよ」と此の如きの島にして学齢児童毎百に付男女平均九一・一六あり。即ち東京大阪両府よりも上位にあり。福島県青森県の八五・〇〇、山梨県の八一・〇〇と比較して何の感かある。
[#挿絵]――教育の普及 沖縄県全体より見れば小学教育の普及は山梨県以上にありと雖も未だ内地各府県の上位にありと云ふべからず。然れども就学歩合の累年統計を視察すれば進歩の急激なる、正に内地各府県の第一等にあり。即ち明治二十五年は男二十、女五なりしもの三十年には男五十一、女二十一となり三十八年には男九十、女七十七となれり。即ち二十年間に六十割以上の進歩を致したるもの人をして隔世の感あらしむるなり。
[#挿絵]――跣足の生徒 那覇首里の如き都会の学童すら大概跣足なり。況んや離島の学童の如き靴草履などを穿つ者一人だにある無し。小学校中児童をして実芭蕉、蜜柑の栽培、鶏の飼養を奨励し其の収入を以て書籍、筆墨紙の費用に充つるものあり。内地各府県の生徒見て以て自ら戒むるを要す。





 日露戦争中の琉球人、日露戦役の間多からぬ給料を貯金し戦地より金四円を其の父母に贈り「戦地にては煙草の価貴く喫煙家は非常に困却の状態なり。然るに私は幼少より煙草を喫むべからずとの御両親の訓戒を守り候故其の困却を免れ申候。之を思ふにも御両親の恩の益々高きを感じ候。依て其の煙草代を貯蓄して得たる金を聊か膝下に呈し安否御伺ひの料にまで奉供候」との書面を添へ至誠の籠る所人をして感激措く能はざらしめたる者は、彼の馬琴の椿説弓張月にて知られたる忠臣毛国鼎の在所中城出身の兵卒新垣仁忠なり。又「予て陛下に捧げし身なれば何時何処にて戦場の露と消えぬとも定め難く候。然れば妹の縁談を止め養子を迎へて家系を継がしむる様相願度候」と郷里に書送し、次で候家屯付近に身を挺んで奮闘し傷を負ふも屈せず進み戦ひて死し金鵄勲章を授与せられ年金をも下賜せられたる兵卒大城亀は沖縄中頭郡の産なり。沙河の大会戦の日、露軍の大弾少弾[#「少弾」はママ]霰よりも劇しく我が大隊長日下部少佐の場に斃るゝやアハヤと誰しも思ひける折柄単身霰なす弾丸を冒して少佐の屍を担ぎ来り、天晴れの動作なりとて直ちに感状を賜り三軍に艶称せられたるは屋宜蒲多と云へる其の姓名さへ奇異なる琉球人。其の産所はと云へば沖縄列島の極西久米島なり。
[#挿絵]――軽便なる懇親会 久米島は絶海なり。幸に汽船の那覇よ…

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