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謎の四つ指
なぞのよつゆび
原題The Mystery of the Four Fingers
著者ホワイト フレッド・M
翻訳者奥 増夫
文字遣い新字新仮名
初出1907年
入力者奥増夫
校正者
公開 / 更新2019-07-16 / 2019-06-30
長さの目安約 266 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

登場人物         備考
マーク・フェンウィック  億万長者
ヴィラ・フェンウィック  娘、実際は姪
ジム・ガードン      元陸上競技選手
ジェラルド・ベナ     なぞの冒険家
チャールズ・レフェニュウ ベイツ
ジョージ・レフェニュウ  フランス人
ヴァンフォート      オランダ人
ベス           白衣の女性
チャールズ        同名が二人いる
ジェイムズ・テイラ    目撃者
ジェイムズ・デイリ    ならず者
イーガン         刑事
グレディ         刑事
フィリックス・ザリ    謎の人物
チャールズ・イーヴォス  放蕩息子
マートン卿        農園の所有者
ジョーンズ        悪党の一味
ネッド・ブロセット    詐欺師
ドラモンド氏       仲買人
ジョーンズ船長      南米帆船の船長
レディ・グリン      マートン卿の妹

第一章 黒あざ
 冬の書入れ時だというのに、ロンドンのグレイトエンパイア・ホテルは珍しく混んでいなかった。おそらく最高級特別室を二、三部屋マーク・フェンウィックが借り切ったせいだろう。同氏の触れこみは米国の成金億万長者。誰も正確な素性や金づるは知らないが、ここ数カ月名前が喧伝され、経済紙や日刊紙で人物像を煽った。
 これまで顔を見せない理由は欧州への船旅で風邪を引いた為とされる。現在まで食事はすべて自室で摂っていたが、いま噂が流れて夕食に降りてくるという。ベネチア風食堂がざわつき出したのが、午後八時ごろだった。
 美しく装飾された部屋には着飾った男女がもう、ちらほら食事していた。万事グレイトエンパイア・ホテルは最高だ。倹約の考えはなく、顧客を選び、静寂を保つ。絨毯は分厚く、給仕の物腰はこの上なく柔らかい。概して心休まる場所だが、照明はちょっと陰気臭かった。でも花々やシダ類が優雅に包んでくれる。楽団の演奏は会話を弾ませるに十分、かき消す事はない。
 扉近くの小さなテーブルで、二人の男が食事していた。一人は用心深くて、生気があり、都会人の証しだ。身ぎれいにめかし込み、一目で紳士と分かる。櫛の通った短髪が力強さを思わせる。金縁眼鏡の奥で光る両眼はじっと落ち着いている。街の男に知られたジム・ガードンだ。一世代前なら競技場の活躍が懐かしい。いまは高名な弁護士だが、雑収入が多いので本業の必要はなかった。
 もう一人の男は更に長身、手足が長く、痩身だが強力な身体能力を思わせた。鷹のように謎めき、冒険家風なのに灰色の瞳が人なつっこい。ジェラルド・ベナが見事な青銅色に日焼けしているのは何年も世界中をうろついていたせいだ。実際じっとしておれない英国人で、常に危険に身を晒さずには満足しない男だった。
 二人の旧友は静かに食事しながら、時々客人を品定めしていた。やがてガードンが口…

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