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佐藤春夫詩集
さとうはるおししゅう
作品ID59947
著者佐藤 春夫
文字遣い旧字旧仮名
底本 「定本 佐藤春夫全集 第1巻」 臨川書店
1999(平成11)年3月10日
初出夕づつを見て「月光 第三輯」1922(大正11)年11月1日<br>犬吠岬旅情のうた「昴 第三年第六号」1911(明治44)年6月1日<br>うぐひす「改造 第三巻第四号」1921(大正10)年4月1日<br>寒蝉鈔(題詩)「報知新聞」1926(大正15)年1月1日<br>しぐれに寄する抒情「報知新聞」1926(大正15)年1月1日<br>遠き花火「月光 九月号」1923(大正12)年9月1日<br>支那の詩より「婦人画報 第二一八号」1924(大正13)年1月1日<br>オルゴオルにそへて弟に與ふ「女性改造 第二巻第七号」1923(大正12)年7月1日<br>孤寂「随筆 第一巻第一号」1923(大正12)年11月8日<br>故園晩秋の歌「婦人之友 第一八巻第一号」1924(大正13)年1月1日<br>暮春のすみれ「日本詩人 第三巻第六号」1923(大正12)年7月1日<br>うつろなる五月「女性改造 第二巻第七号」1923(大正12)年7月1日<br>心を人に與へ得て「婦人公論 第八年第一一号」1923(大正12)年10月1日<br>鳩「随筆 第一巻第一号」1923(大正12)年11月8日<br>詩論「奢灞都 第三巻第一号」1926(大正15)年1月1日<br>青樓の團扇に題す「月光 九月号」1923(大正12)年9月1日<br>蘇臺竹枝より「月光 九月号」1923(大正12)年9月1日<br>海の若者「随筆 第一巻第一号」1923(大正12)年11月8日<br>私の柱時計「随筆 第一巻第一号」1923(大正12)年11月8日<br>十三時「報知新聞」1926(大正15)年1月1日<br>喜劇「報知新聞」1926(大正15)年1月1日<br>なぞ/\「奢灞都 第三巻第一号」1926(大正15)年1月1日<br>申し開き「奢灞都 第三巻第二号」1926(大正15)年2月1日<br>願ひ「女性 第六巻第四号」1924(大正13)年10月1日<br>伊都滿譚詩「改造 第七巻第四号」1925(大正14)年4月1日<br>冬夜微吟「婦人之友 第二〇巻第二号」1926(大正15)年2月1日<br>キイツの艶書の競賣に附せらるるとき「三田文学 第二巻第八号」1911(明治44)年8月1日<br>ひそかに己が詩集に題す「随筆 第一巻第一号」1923(大正12)年11月8日<br>さくら「婦人之友 第二〇巻第四号」1926(大正15)年4月1日<br>疲れた人「令女界 第五巻第三号」1926(大正15)年3月1日<br>水無月來りなば「驢馬 第二号」1926(大正15)年5月1日
入力者きりんの手紙
校正者hitsuji
公開 / 更新2022-04-09 / 2022-03-27
長さの目安約 15 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

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詩集


[#改段]
[#ページの左右中央]


堀口大學に


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詩集はしがき



 數奇なるはわがうたの運命なるかな。かつては人に泣かれしものを、いまは世に喜ばるるとぞ。しかも評家は指ざし哂ひて餘技なるのみといふ。或は然らむ。魯なるわれは餘技なるもののために命をささげ來にけらし、志してより二十年のこの朝夕を。かくてわが青春のかたみにと一卷の歌ぐさぞ僅にわれにのこりたる。心すなほなる時には稚き言葉なほおぼつかなく、言葉やや長けにしとおもへば心はすでに彈みなし。いのち短きものいかでかひとり麗人のみならむや。もみぢの下葉なす今日のものをさへ加へて、數ふればわがうたの百にも足らはぬこといと口惜し。古人は螢雪を説きぬ、げに一ときを惜むべきものただに春宵のみにはあらざりけらし。或はゆたかなる才のまにまに春蠶のよく絹を吐いて、千首詩こそ萬戸侯を輕んじもせむ。たとひ一吟に雙涙をながすとも百にも滿たぬうたかたのわが歌をはたなにとかせむ。人のわれを指ざして哂ふもげにうべなりと知りぬ。いとせめて百年ののちわがうた一つ世にあれよと願はば、さてもわが魯なることの證をさらにひとつ増すのみに過ぎざらむか。しばし千[#挿絵]なるおもひにふけりてさて筆を擱く。大正十五年三月ついたちたまたま病める父をみとりせむとて歸れる故山の雨の夕べに
佐藤春夫しるす



北風よ起れ、南風よ來れ、わが園を吹いてその香氣を揚げよ、願くはわが愛する者のおのが園にいりきたりてその佳き果を食はんことを

雅歌第四章十六
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幼き歌





夕づつを見て

きよく
かがやかに
たかく
ただひとりに
なんぢ
星のごとく。
[#改段]


犬吠岬旅情のうた

ここに來て
をみなにならひ
名も知らぬ草花をつむ。
みづからの影踏むわれは
仰がねば
燈臺の高きを知らず。
波のうね/\
ふる里のそれには如かず。
ただ思ふ
荒磯に生ひて松のいろ
錆びて黒きを。
わがこころ
錆びて黒きを。
[#改段]


秋の夜

がらす障子を
ゆすぶりて
夜ふく風を
にくむなり。

かひなき人を
かた戀の
われを哂ふと
ふく風よ。

汝れが鋭き
あざけりは
君を落葉と
おもへとや。
[#改段]


嫁ぎゆく人に

筒井筒をさなかりしころの友垣の女の童ははやく年たけて嫁ぎゆくこそ悲しくも甲斐なけれ

人妻の双のたもとはみぢかしや あはれ
[#改段]


同心草





淡月梨花の歌


こはこれわが未だをとめなりし頃のうつし繪なり。さらば、げに君にこそはおくらめ。をかしき姿をな笑ひそ。ゆめ、人にな示しそ。心せよ、わが片身なるものを。かく言ひて、人のひそかにわれに與へたるひとひらの紙の上には、手に團扇もちて立てる舞姫姿の君ありき。ながめ入りつつ、さてわが言ひ出でし言葉は癡にして歌に似たり…

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