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死神の名づけ親(第一話)
しにがみのなづけおや(だいいちわ)
作品ID60030
副題
著者グリム ヴィルヘルム・カール / グリム ヤーコプ・ルートヴィッヒ・カール
翻訳者金田 鬼一
文字遣い新字新仮名
底本 「完訳 グリム童話集(二)〔全五冊〕」 岩波文庫、岩波書店
1979(昭和54)年8月16日
入力者かな とよみ
校正者noriko saito
公開 / 更新2020-12-10 / 2020-11-27
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 びんぼうな男が、子どもを十二人もっていました。それで、その子どもたちにパンをたべさせるために、男は、いやおうなしに、昼となく夜となく働きつづけました。そこへ十三人めのが産声をあげたものですが、こまってばかりいてもどうにもならず、ままよ、いちばんはじめにばったりでくわした者を名づけ親にたのんでやれとおもって、大通りへとびだしました。
 男にでくわした初めてのもの、それは神さまでした。神さまには、男のくよくよ思ってることがちゃんとおわかりですから、
「かわいそうに! 気の毒な人だね。わしが、おまえの子どもに洗礼をさずけてあげよう、その子どものめんどうをみて、この世で幸福なものにしてあげよう」と、仰せになりました。
「どなたですか、あなたは」と、男が言いました。
「わしは、神さまだよ」
「それでは、あなたを名づけ親におねがいするのはおやめだ」と、男が言いました、「あなたは、金もちにゃ物をおやりになって、びんぼう人は腹がへっても知らん顔していなさる」
 男は、神さまが富と貧乏とを、大きな目でごらんになって、うまく分配なさるのがわからないものですから、こんな口をきいたのです。こんなわけで、男は神さまに背なかをむけて、すたすた歩いて行きました。そこへ悪魔がやってきて、
「なにをさがしてるんだ。おいらをおまえの子どもの名づけ親にすれば、子どもに金貨をしこたまやったうえに、世の中の快楽ってえ快楽を一つのこらずさせてやるがなあ」と言いました。
「どなたですえ、あなたは」と、男がきいてみました。
「おいら、悪魔だよ」
「それでは、あなたを名づけ親におねがいするのは、ごめんこうむる」と、男が言いました、「あなたは、人間をだましたり、そそのかしたりしますね」
 それからまた、すたすた歩いて行くと、かさかさになった骨ばかりの死神が、つかつかとやってきて、
「わしを名づけ親にしなよ」と言いました。
「どなたです、あなたは」と、男がきいてみました。
「わしは、だれでもかれでも一様にする死神さ」
 これをきくと、男は、
「あなたならば、おあつらえむきだ。あなたは、金もちでも貧乏人でも、差別なしにさらっていきますね。あなたを、名づけ親におねがいしましょう」と言いました。死神は、
「わしはな、おまえの子どもを金もちにするし、有名な人にもしてあげる。わしを友だちにするものなら、だれにでもそうしてやるきまりなのさ」とこたえました。男は、
「このつぎの日曜日が洗礼です。刻限をみはからって、いらしってください」と言いました。
 死神は、約束どおりに、ふらりと姿を見せて、いかにもしかつめらしく名づけ親の役をつとめました。
 この男の子が大きくなってからのこと、あるとき名づけ親がはいってきて、わしについておいで、と言いました。名づけ親は、この男を郊外の森のなかへつれこむと、なんですか、そこにはえてる薬草…

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