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「麻布襍記」叙
「あざぶざっき」じょ
作品ID60133
著者永井 荷風
文字遣い新字新仮名
底本 「麻布襍記 ――附・自選荷風百句」 中公文庫、中央公論新社
2018(平成30)年7月25日
初出「麻布襍記」春陽堂、1924(大正13)年9月23日
入力者砂場清隆
校正者入江幹夫
公開 / 更新2021-03-19 / 2021-02-26
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


麻布襍記収むるところの小説雑録随筆のたぐい皆そのおりおり月刊文学雑誌の嘱を受けて一時の責を塞ぎしものに過ぎず。五とせ以前築地より麻布に移りすみてここに筆をとりしもの多ければかくは名づけたるなり。思えば麻布に移りてよりこの五とせが間には悲しきことの多かりき。厳師森夫子は千朶山房に簀を易えたまい又莫逆の友九穂井上君は飄然として道山に帰りぬ。爾来われは教を請うべき師長もなくまた歓び語るべき伴侶もなし。衰病の孤身うたた寂寞のおもいに堪えやらず文筆の興も従って亦日に日に索然たり。されば復び拙著を刊行する心もあらざりしが春陽書楼の主人震災の後頻に訪来りてすすむるものから遂にこばみがたく拙劣の一集またここに成るを見たり。大正十三年甲子の歳仲夏荷風病客麻布窮巷の陋居にしるす。



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