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由緒ある英国庭園にて 咲ける花のふしぎな夢
ゆいしょあるえいこくていえんにて さけるはなのふしぎなゆめ |
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作品ID | 60169 |
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原題 | A FLORAL FANTASY IN AN OLD ENGLISH GARDEN |
著者 | クレイン ウォルター Ⓦ |
翻訳者 | 大久保 ゆう Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | 大久保ゆう |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2019-10-31 / 2019-11-05 |
長さの目安 | 約 4 ページ(500字/頁で計算) |
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[#挿絵]
[#挿絵]
[#挿絵]
詩とカラー画デザイン ウォルター・クレイン
印刷 エドマンド・エヴァンズ
[#挿絵]
なつかしき世の園の夢を見る
かつて草花は人のごとき名を持ち
どうにも姿もふしぎで
紳士淑女よろしく振る舞ったという
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その昔ロザリンドの閨房近くでは
孔雀色したイチイの垣根のそばに
何も草花が見つからなかったそうだが
実は見つけ方にこつがあるのだ
さあ木戸の鍵を手に取るがよい
見るも麗しく 整えられた木の節や
刈り込まれた茂み なめらかな芝生に
沿って 気ままに夢をたどるのだ
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草の葉からとうに雫も落ちきって かたわらで
時爺がその大鎌を研いでいるうちに
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四季の乙女らが飛ぶのも忘れて
日時計の柱をぐるりと踊るあいだに
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英語の古書から一葉つまめば
糸葉がひとり文筆を持ち来てくれよう
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みどりの国の片隅から知らせておくれ
女と男よろしく装う草花たちのことを
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まずは美神之鏡
その向こうには流血之愛神が見える
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かたわら麗乙女群が連れだって
さして心に気にもとめずに通り過ぎてゆく
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つづいて 輝く円盾を手にしたひとりの騎士
かなりの厚さの獅子之群牙が見えるか
羽に覆われた盾頂は申し分なく
黄金の布地が広がっている
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純朴な正直者がいたずらに
布地を見せるが誰もまとおうとしない
そのそば つまれてしまう羊飼之袋
ずるがしこい襤褸男が下手人だ
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ほかに 仔馬之足
告天使距に早駆
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草花のさなか まっすぐに向かう
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みちみち 泉のところであえぐ鹿舌や
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陽雫をなめる犬舌などもいる
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こちらは乙女之髪に仕える美神之櫛
あちらには 美女に捧ぐ王杯たち
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お召し物は紫と黄金でご満悦
とはいえ肩にかかるは死之夜布
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見よ 衣と冠まとう都之華を
黄金杖にかしづかれている
かたわら 草花の一群がまわりに押し合いへし合い
貴婦人のこうべから会釈をいただこうと争う
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待ちかまえる狐之手袋たち
ふたりひと組どころか大勢一党
この愉しみ見逃すまいと繰り出して
姉妹・伯母叔母・従姉妹まで
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針草がため息つきつつ顔を上げ
いまだ縫われぬ独身男之釦を見やる
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とはいえ未婚の軟弱者らの顔は眼中になし
なぜならまだ刈られたばかりのひよっこだから
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馬尾は狼爪から逃げおおせ
淑女之縁飾とともに走り去る
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修道士之頭巾が法学士をつつみ
そして司祭草が閣下自身を覆う
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咬竜はその顎門を開くも
蘇格之国章を目にするや青ざめる
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あまりに勝ち目がなさすぎる
鱗のない竜であっては
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匍匐娘がだらん横に…