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弔辞(徳田秋声)
ちょうじ(とくだしゅうせい)
作品ID60171
著者正宗 白鳥
文字遣い新字新仮名
底本 「白鳥随筆 坪内祐三選」 講談社文芸文庫、講談社
2015(平成27)年5月8日
初出「文学報国 第十号」日本文学報国会、1943(昭和18)年11月20日
入力者藤間清霞
校正者きりんの手紙
公開 / 更新2020-11-18 / 2020-10-28
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


 君は古稀を過ぐる長き人間生活に於て、また半世紀に達する長き文壇生活に於て、敢て奇を弄せず環境に身を委ねて生存を持続されたり。人間の苦難を苦難とし、喜悦を喜悦とし、思想に於ても感情に於ても作為の跡は非ざりしようなり。君の文学は坦々として毫も鬼面人を驚かすようなこと無く、作中に凡庸社会を描叙しながら、そのうちに無限の人間味を漂わせたり。熟読翫味してます/\味わいのこまやかなるは君の文学の特色なり。謙虚に身を処し、自己の才能をほこらず他と争う事もなかりし故、文壇の諸氏より好意を寄せられ、五十歳の記念祝賀還暦の祝賀など、明治以後の文壇社会に於ては稀有ともいうべきほど盛大に挙行されたり。逝去に際しても、権威ある文学報国会の小説部会によって会葬を営まれるの、文壇前例なき栄誉を得られたり。
 我等、君と交わりを結び数十年に渡る長き間、反目軋轢の悪記憶を留めざりしは、淡々たる君の君子人たる態度に依るならんか。ここに永遠不可思議の世界に旅立たる、君を我等静かに凝視せんとす。
昭和十八年十一月二十一日
友人総代
正宗白鳥

(「文学報国」昭和一八年一一月)



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