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ブラウン神父総説
ぶらうんしんぷそうせつ
作品ID60273
著者村崎 敏郎
文字遣い新字新仮名
底本 「〔ブラウン神父の醜聞〕」 HAYAKAWA POCKET MYSTERY BOOKS、早川書房
1957(昭和32)年3月15日
入力者時雨
校正者sogo
公開 / 更新2021-04-19 / 2021-03-27
長さの目安約 8 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 チェスタートンのブラウン物もいよいよこれが最後の第五集 The Scandal of Father Brown(1935)である。ハヤカワ・ミステリ既刊の「ブラウン神父の無知」「知慧」「懐疑」「秘密」に続くもので、計五十一篇になる。ただ最後の「村の吸血鬼」だけは後に発表されたものであるが、ブラウン物を総集する便宜上ここに収録しておく。
 さて毎度引き合いに出して恐縮だが、英国ローマ・カトリック教会の大司教であると同時に「陸橋殺人事件」などの作家でもあるロナルド・ノックス師は、オクスフォード叢書から出た「ブラウン神父選集」の序文で、「醜聞」には作者晩年の意気がうかがわれる佳作が多いと批評した上、次の四篇を選んでいる。
「古書の呪い」「緑色の人」「ピンの先き」「とけない問題」
 私見では、このうち前二者は特に優れていて、ブラウン物中最上のグループに入れられそうである。しかしその他の各篇もよくそろつていて、とりどりにおもしろい。ただ作品の配列がちよつとまずくて、ホテルが二度続き、海岸も二度続くのが、多少気になる。もう一つ目につくのはユーモラスな味がますます濃厚になつてきて、神秘的な雰囲気描写がやや薄れている点である。尤も第一作「青い十字架」以来ユーモアはこの作者の貴重な持味に違いないが、後期の作品ほどそれが目立つて、中にはユーモア小説と言いたいような物さえあつた。したがつて言葉のシャレも多くなつて、本集の「手早い奴」「ピンの先き」「とけない問題」などは題名までそれである。しかし「古書の呪い」「緑色の人」「青君の追跡」……どれを見ても、ユーモラスな書き出しでいささかピントの狂つた人物を紹介しているうちにいつか怪奇な幻想の世界へ読者を引きこんで行くあたりに、なんとも言えない妙味がある。
 ついでにその他の集からノックスが選んだ物を挙げておこう。
「ブラウン神父の無知」から――「青い十字架」「秘密の庭」「妙な足音」「見えない人」「イズレイル・ガウのあつぱれな正直」「神の鉄鎚」「折れた剣」
「知慧」から――「盗賊の楽園」「機械のまちがい」「ペンドラゴン一族の滅亡」「ジョン・ブールノアのふしぎな犯罪」
「懐疑」から――「犬のお告げ」「羽のはえた短剣」
「秘密」から――「法官邸の鏡」
 このほかに当然加えてほしい物もあるが、それは選集の頁数の関係もあろうから、この辺がまず妥当なところらしい。
 しかし実はブラウン物はどれを取つても凡百の短篇の水準をはるかに抜いているし、またほんとうにだれが読んでもおもしろい。これは探偵小説の根本になるトリックが、ちよつとほかに追随する者がないほど、独創的で巧妙だからである。一人二役や死体消失のトリックを何度も使いながら、そのたびにまつたく新奇な趣向に変えて読者の意表を突いて行く。死体を隠すために戦闘を命じたりストライキを煽動したりするかと思…

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