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バブル崩壊
バブルほうかい
副題ロンドン危機シリーズ・4
ロンドンききシリーズ・よん
原題A Bubble Burst
著者ホワイト フレッド・M
翻訳者奥 増夫
文字遣い新字新仮名
初出1903年
入力者奥増夫
校正者
公開 / 更新2020-04-01 / 2020-03-27
長さの目安約 26 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#ページの左右中央]


いかにして証券取引所を恐慌に落とし、帝国の命運を二日間撹乱させたか


[#改ページ]


 一九〇六年、平和な時代が順調に始まったようで、当然、特徴は活発な商業・経済活動になる。世界的投機の激しさといったら、どの時代もかなわず、南海泡沫事件の狂乱時代や、鉄道王のハドソンが活躍した時代すらも及ばない。
 英国銀行に積みあがった数兆ポンドは利率二・五パーセント、惜しげもなく引き出され、新しい鉱山が開発され、誰もが儲けようとしていた。表面上、人々の楽観的な期待には優良な地盤があった。
 七〇キロ平方の南アフリカ・ランド地区には高品位の金鉱脈があり、計り知れない莫大な富を含有し、地球上で最も金のなる土地であり、史上初、きちんと管理されていた。上流階級から下流階級までみんな貯金を南アフリカに投資した。
[#挿絵]
 言い換えればすさまじいブームだ。こんな現象は商業史上どこにも見られない。起業家の夢の時代であった。今なお大部分は計画が充分保障されていた。
 しかしながら市場にはガセネタも多数あった。慎重な資本家の中には真っ先に危険に感づくものもいたが、聞く耳を持たなかった。コーサ族のドラムが耳にこびりついて、みな狂ってしまった。おそらくパークレーンの人々は新興成金を決して受け入れないだろう。
 英国全体が熱狂に浮かれた。真の投資や事業が、単なるばくちと化した。ロンドンはそれ以外考えない。シティには興奮した買人や相場師が押しかけた。きのう部外の仲介人だった小物が、サラブレッド二頭を担保に事務所を構えた。ダイヤモンドこそが、新たな成功のあかしだった。
     *
 忙しい一日が終わろうとしていた。カール・エリクソンが自分の事務所に座って煙草を吸っている。エリクソンは昨日までしがない食堂の給仕係だった。今日ハムステッドにひとかどの事務所と小さな自宅を手に入れた。多くの間抜け同様、つられての上京だった。暗い顔つきにぎこちない笑みがあり、唇が変に引きつり、目が疲れて眠そうだ。
 共同出資者が葉巻をくわえて向かい側に座っている。太っちょで、あごが張り、口元が薄情だ。六か月前イーライ・スミスは郊外の大繁盛肉屋だった。今はE・アシャトン・スミスと名乗り、大口の資金提供者となった。実際自慢げに、四万ポンド小切手に署名しても痛くもかゆくもないとか。シティ界隈でエリクソン社の両人以上にがめつい卑劣漢はいなかった。
「大きなカードを切るのか、え?」
 とアシャトン・スミスが訊いた。
 エリクソンは神経質そうに笑った。細身で小柄な体が興奮して震えている。たれ目が胡散臭かった。
 エリクソンがゴホゴホむせながら、
「最強の札だ。世紀の作戦だぜ。イーライ、どれくらい稼げると思うかい? 南ア株を一週間で五、六ポイント落とせたら」
 アシャトン・スミスのダイヤモンドが興奮…

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