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一休さん
いっきゅうさん
作品ID60426
著者五十公野 清一
文字遣い新字新仮名
底本 「一休さん」 日本書房
1954(昭和29)年11月1日
入力者sogo
校正者The Creative CAT
公開 / 更新2021-06-25 / 2021-05-29
長さの目安約 82 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

お母さま

 こどものとき 一休さんは、千菊丸という なまえでした。
 ある はるの日の ことです。千菊丸は うばに つれられて きよみずでらに おまいりに いきました。
 おてらの にわは さくらの 花が まんかいでした。
 はらはらと ちる さくらの はなびらの したでは、おばあさんや お母さんに つれられた 子どもたちが、あそびたわむれています。
「きれいだなあ ばあや。」
 しばらく 花に みとれていた 千菊丸は、ふと、むこうの いしだんの ところに いる おや子づれの こじきを みて、ふしぎそうに たちどまりました。
 きたない きものを きた こじきの 母おやが、五つか六つぐらいの 子どもを そばに すわらせて、おもちゃを やっているのでした。
 やがて 千菊丸は うばの 手を ひいて、たずねました。
「ばあや、あれなあに。」
「おや子の こじきです。まずしいので さんけいの 人に ものを もらって たべているのです。」
「そうじゃあないの、ばあや、千菊は あの おんなの こじきは あの 子どもの なんじゃと きいているのだよ。」
「あれは、お母さんと 子どもです。」
「ふうーん。」
 と、千菊丸は いかにも ふしぎそうです。
「こじきにも お母さまが あるの、ばあや。」
「はい。こじきにも お母さまが いますよ、千菊さま。」
「ふしぎだ なあ。」
 千菊丸は かわいい くびを かしげて、しばらく じっとして いましたが、
「あんな きたない こじきにも お母さまが あるのに、千菊に  どうして お母さまが ないのだろう。ばあや、どうして 千菊には お母さまが ないの。」
 と、ばあやの 手を ぎゅっと にぎりしめて いいました。
「ええ、千菊さまには……千菊さまには……。」
 うばは、はたと こたえに つまって しまいました。
 と いうのは、つぎの ような ふかい わけが あるからでした。

父は てんのう

 一休さんの うまれたのは おうえい元ねん、いまから ざっと 五百六十年ばかり まえの ことです。
 お父さまは ごこまつてんのうで、お母さまは いよのつぼね と いいました。
 ほんとうならば 一休さんも てんのうの おうじさまとして、きゅうていで そだてられる はずでしたが、お母さまが、わるものの ざんげんで てんのうの おそばに いられなくなったので、一休さんも お母さまとも わかれて 京のみやこの かたほとりに、うばと ふたりで すむことに なったのです。
 お母さまも 京のみやこに すんでいましたが、一休さんは うまれたばかりで お母さまと わかれわかれに なったので、お母さまの あることさえ しりませんでした。
 それで みんな お父さまも お母さまも あるのに、じぶんだけ うばと ふたりきりなのは どうしてだろうと、いつも…

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