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ペンギン鳥の歌
ぺんぎんどりのうた
著者原 民喜
文字遣い新字新仮名
底本 「原民喜童話集」 イニュニック
2017(平成29)年11月15日
初出「近代文学 8月号」近代文学社、1951(昭和26)年8月1日
入力者竹井真
校正者砂場清隆
公開 / 更新2020-11-15 / 2020-10-28
長さの目安約 2 ページ(500字/頁で計算)
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本文より


 森は雪におおわれて真白になりました。高い大きな枯木の上で、カラスが拡声器をすえて、今しきりに、こんなことを喋っています。
ああああ ただ今 試験中です
ああああ ただ今 試験中です
ああああ ただ今 試験中です
 いつまで待っていても、ああああ と云うばっかしなので、小鳥たちは顔を見あわせてくすくす笑いました。でも、何か始まるだろうと思って待っていました。
ああああ ええ ただ今 試験中です
ああああ ええ ただ今 試験中です
 また同じことをくりかえしています。小鳥たちは、また、くすくす笑いました。でも、何か始まるのかと思って待っています。
ああああ ただ今 試験中です
 カラスはまた同じことを平気で喋っています。ガガガガガ……拡声器の音が少し変って来ました。さあ、何かはじまるよ、と小鳥たちは静かにしていました。
ああああ ええ ただ今からペンギン鳥の歌をはじめます
 音楽がきこえて歌がはじまりました。
ペンギン鳥 ペンギン鳥は雪の上
ペンギン鳥 ペンギン鳥は雪の上
白熊 あざらし 走る風
海は真青 空も真青
雪は真白 虹は七色
沖で鯨は潮を吹く
チンチンチンチン 鈴の音
すういすういと ペンギン鳥
ペンギン鳥の列はゆく
ペンギン鳥の列はゆく
夜でも朝でも ペンギン鳥
ペンギン鳥はペンギン鳥
ちょっと楽しく ちょっと立派で
ちょっと元気で ちょっと優しく
ちょっと賢こく ちょっと静かで
ペンペンペンペン ペンギン鳥
ペンギン鳥は 雪の上
ペンギン鳥は 雪の上
チンチンチンチン 鈴の音
すういすういと ペンギン鳥
ペンギン鳥の列はゆく
ペンギン鳥の列はゆく
 ふと拡声器がゴロゴロ鳴って、歌はやんでしまいました。
ああああ……
 またカラスの声がはじまりました。
ああああ……
 カラスは拡声器の前でしきりに気どっていました。
ああああ ええ ただ今から こんどは
カラスの歌をはじめます
 小鳥たちは顔を見あわせて、くすくす笑いだしました。



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