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利根水源探検紀行
とねすいげんたんけんきこう
作品ID60467
著者渡辺 千吉郎
文字遣い新字旧仮名
底本 「臺灣生蕃探檢記」 博文館
1897(明治30)年2月25日
初出「太陽 第一卷第一號」博文館、1895(明治28)年1月
入力者富田晶子
校正者雪森
公開 / 更新2021-09-19 / 2021-09-27
長さの目安約 32 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

目的

利根の水源を確定し、越後及ひ岩代と上野の国境を定むるを主たる目的となせども、傍ら地質の如何を調査し、将来開拓すべき原野なきや否、良山林ありや否、従来藤原村三十六万町歩即凡そ十三里四方ありと号する者果して真なりや否、動植物及び鉱物の新奇なるものありや否等を究るに在り、又藤原村民の言に曰く、従来此深山に分け入りて人命を失ひしもの既に十余名、到底深入することを得ず古より山中に恐ろしき鬼婆ありて人を殺して之を食ふ、然らざるも人一たひ歩を此深山に入るれは、山霊の祟にやあらん忽ち暴風雨を起して進むを得ざらしむ、唯口碑の伝ふる所に拠れは、百二十年以前に於て利根水源たる文珠菩薩の乳頭より混々として出で来り、其傍に光輝燦爛たるものあるを見しものありと、此等の迷霧を霽さしめんとの志は一行の胸中に勃然たり、此挙や数年前より県庁内に於て行はんとの議ありしも常に其機を得ず、然るに今や之を决行する事とはなりぬ。一行の姓名は左の如し
 技師       小西文之進
 県属第二課地理掛 森下鑛吉
 同        深井仙八
△利根郡長     櫻井小太郎
 利根郡書記    遠藤正太郎
 沼田尋常高等小学校長
          石田勝太郎
△沼田警察署長   吉田忠棟
△沼田巡査部長   坂本武雄
 同 巡査     鹽原甚藏
 沼田収税署長   榎本嘉助
 沼田小林区署長  土屋榮太郎
 同森林監守    長松榮之進
△同        高野峯之進
 利根郡水上村長  木村政治郎
 同 前村長    大塚直吉
△同大字藤原村区長
        中島甚五左衞門
及余を合せて総計十七名、中途帰りし者を除けば十二名とす、右の三角印は中途帰りしものとす、此他人夫十九名同道者三人、合計三十九名とす、但し人夫中四人及道者三人は中途に帰りたるを以て、探検の目的を達せし人員は合計二十七名となす。
因に云ふ、右一行中小西技師は躰量二十三貫の大躯なれ共常に県下巡回の為め山野の跋渉に慣れ、余の如きは本と山間の産にして加ふるに博物採集の為め深山幽谷を跋渉[#ルビの「はつせう」はママ]するの経験に積み、森下深井両君の如きは地理掛として最も其道に専門の人と云ふべきなり、林区署の諸君亦然り、大塚君は前年名佐技師に従ふて利根山間を探りし経験あり、長髯口辺を被ひ背に熊皮を横たへ、意気の凛然たる一行中尤著るし、木村君は初め一行に向つて大言放語、利根の険難人力の及ぶ所に非ざるを談じ、一行の元気を沮喪せしめんとしたる人なれ共、本と水上村の産にして体脚強健、棒押しに於ては村内の人民敢て之に勝つものなしと云ふ、一夕小西君と棒押しを試みしも到底其対手に非ざるなり、此他の諸君も皆健脚の人のみ、人夫中にては中島善作なるものは猟の為め常に雪を踏んで深山に分け入るもの、主として一行の教導をなす、一行方向に迷ふことあれば直ちに巧…

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