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諜報部秘話
ちょうほうぶひわ
副題02 第2話 マザロフ銃
02 だい2わ マザロフじゅう
原題THE ROMANCE OF THE SECRET SERVICE FUND, No II: THE MAZAROFF RIFLE
著者ホワイト フレッド・M
翻訳者奥 増夫
文字遣い新字新仮名
初出1900年
入力者奥増夫
校正者
公開 / 更新2020-08-02 / 2020-07-25
長さの目安約 22 ページ(500字/頁で計算)
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本文より

[#挿絵]
[#改ページ]

 ニュートン・ムーアが暗号電報で陸軍省に駆けつけた。迅速が契約の必須条件だった。ジョージ・モーリイ卿が直ちに本題入り。
「君にピッタリの案件だ。マザロフ銃は聞いたことがないだろう?」
 ムーアは知らないと認めた。何かの新型で、その必殺武器に良くないことが起こったのでしょうか、と応じた。
 ジョージ卿が説明、
「その通り。君の仕事は回収だ。若い優秀なロシア人が発明した。名前はニコラス・マザロフだ。試射して、実際マザロフから購入した。行く行くは歩兵戦術がひっくり返ることになる。実にすばらしい代物だ。弾丸は液体空気で発射され、薬きょうはない。銃身と弾丸の摩擦がないから、再装填するまで四百倍も撃てる。さらに煙と発射音が全く出ない。発明の価値が想像できよう」
「ええ、実際に見たいですね」
 ジョージ卿があっさりと、
「ぜひ見てくれ。実は大至急、探してもらいたいんだ。なにしろ銃と設計図が盗まれたから」
 ムーアがにんまり。呼ばれた理由がいま分かった。
「ここで盗まれたのですか、ジョージ卿」
「盗まれたのは昨日の午後、だまされたんだ。マザロフが会いたいと言ったけど、わしは忙しかった。では部下のパーキンソン大佐を、と求めた。大佐によれば相当困っているようだったとの事。銃の欠陥が見つかり、弾丸が引っかかりぎみで、射撃手が危険だという。そこで銃と設計図を一日か二日あずかっていいかと尋ねたそうだ。当然反対せず、頼みを聞き入れた。一時間前マザロフがここへ来た時、欠陥は直したかと聞いたら、びっくりのなんの、昨日のことは全く知らないという。実際、夕べ遅くまでリバプールにアリバイがあった。悪知恵の働く悪党が替え玉を演じて、あざやかに奪って行った」
「大佐はマザロフをご存知だと思いますが」
「良くは知らなかったが、間違いなく本人だと認めている。もちろん大佐も仕事で忙しかった。実際マザロフが嘘をつくなんて思わない。マザロフがここへ来るときはいつも糸のほつれた古いインバネス外套を着て、左側に茶色のしみがついたシャベル帽をかぶってくる。大佐は昨日両方見たと断言している」
「マザロフに会いたいですね」
 とムーア。
 ジョージ卿がベルを押すと、奥の部屋から、額の広い、黒い瞳の若い男がそそくさ現れた。身なりが悪く、率直に言えば汚なかった。ムーアがじろり、全身をさっと検分した。
「この方が噂のロシア紳士だよ、ニュートン・ムーア君」
 マザロフがすかさず、
「名前だけはロシア風ですが、英国人です。銃を取り戻していただけたら、感謝してもしきれません」
 ムーアが応じて、
「最善を尽くしますよ。ところで、ちょっと立ち入ったことを伺います。宿までご一緒して、お話を聞きましょう」
 ムーアはこの男を信用した。ほんとのことを話していると確信した。マザロフを通りに誘い、腕を取った。
「…

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