えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
雨月物語
うげつものがたり |
|
作品ID | 60609 |
---|---|
副題 | 02 現代語訳 雨月物語 02 げんだいごやく うげつものがたり |
著者 | 上田 秋成 Ⓦ |
翻訳者 | 鵜月 洋 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「改訂 雨月物語 現代語訳付き」 角川文庫、KADOKAWA 2006(平成18)年7月25日 |
初出 | 「雨月物語」角川文庫、角川書店、1959(昭和34)年11月30日 |
入力者 | 砂場清隆 |
校正者 | みきた |
公開 / 更新 | 2023-08-08 / 2023-10-09 |
長さの目安 | 約 381 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
凡例
一 本書は、安永五年(一七七六)刊、野梅堂版(京都梅村判兵衛・大坂野村長兵衛の合板)の初版本を底本とした。
二 本文の覆刻に際しては、できるだけもとのかたちをくずさないように留意したが、文庫という性質上、つぎの方針をとった。
1 漢字はおおむね原本通りの漢字を用いた。
2 振り仮名は原文にあるものは大半これを付したが、とくにわかりきったよみで、あまり煩瑣にわたる場合は、これを省略した。
3 送り仮名は原文ではかなり不統一であるが、これは特殊な場合をのぞいて、文語文法の送り仮名に改めた。
4 仮名づかいは旧仮名づかいの正規なものに統一した。
5 句読点は、原文ではすべて「。」であるが、読解に便利なように句点「。」と読点「、」に区別し、あらたに補ったものもある。
6 原文には改行・段落がないが、これも読解に便利なように適宜設けた。
7 文法上誤りと思われる箇所や、脱字・衍字と思われる箇所もないではないが、作者特有の語法もあり、用語・用字への配慮もあると思われるので、なるべく原文通りにして、ときに脚注をもって説明した。
8 原文で「人/\」「おろ/\」などとあるところは「人々」「おろおろ」とした。
三 原文の挿絵は全部これを入れ、説明をくわえた。
四 脚注は、スペースのゆるすかぎり入れて、解読に便なるようにつとめたが、限られた範囲内のことであるから、くわしい出典・語義・語釈・用例などは記すことができずにおおむね省略した。しかし本文を解読するだけならばこれで十分足りると思う。なお脚注だけで解読しがたい場合には、現代語訳によられたい。
五 現代語訳は、なるべく原文の持ち味や文体の特色をそこなわないように留意しながら、しかもなるべく逐語訳にしたがって文意を正確に訳出し、現代文としても味読にたえるようなものとすることに努力した。ことに説話体の文体と、長いセンテンスがえんえんと接続する秋成独自の文体のニュアンスを生かしながら、これを現代文とするということに苦心をはらった。
六 解説は、「雨月物語」を鑑賞し、研究するうえの基礎をしめしておいた。
昭和三十四年十月
鵜月 洋
[#改丁]
[#ページの左右中央]
現代語訳 雨月物語
[#改丁]
雨月物語序
羅貫中は「水滸伝」を著わして、そのために子孫三代にわたって唖の児が生まれ、紫式部は「源氏物語」を著わして、一度は地獄にまでおちたが、それはおもうに彼等が架空の物語や狂言綺語を書いて世の人々を惑わせた悪業のために、そのむくいを身にうけたというべきであろう。そしてその文をみると、それぞれかわっためずらしい趣向をこらし、その文章の勢い・調子は真にせまり、あるいは低く、あるいは高く、あたかもころがるようになめらかで流暢であって、これを読むものの心持をしてたのしく快くさせるものである。その当時の出来事を、遠い…