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珊瑚集
さんごしゅう
作品ID60661
副題仏蘭西近代抒情詩選
ふらんすきんだいじょじょうしせん
著者永井 荷風
翻訳者永井 荷風
文字遣い新字旧仮名
底本 「珊瑚集」 岩波文庫、岩波書店
1991(平成3)年11月18日
初出死のよろこび「讀賣新聞」1909(明治42)年5月18日<br>憂悶「讀賣新聞」1909(明治42)年5月18日<br>暗黒「讀賣新聞」1909(明治42)年5月18日<br>仇敵「スバル 第七號」昴発行所、1909(明治42)年7月1日<br>秋の歌「スバル 第七號」昴発行所、1909(明治42)年7月1日<br>腐肉「スバル 第八號」昴発行所、1909(明治42)年8月1日<br>月の悲しみ「スバル 第八號」昴発行所、1909(明治42)年8月1日<br>そゞろあるき「新文林 第二卷第四號」白鳳社、1909(明治42)年4月1日<br>ぴあの「新文林 第二卷第四號」白鳳社、1909(明治42)年4月1日<br>ましろの月「女子文壇 第五年第四號」女子文壇社、1909(明治42)年3月1日<br>道行「女子文壇 第五年第四號」女子文壇社、1909(明治42)年3月1日<br>夜の小鳥「スバル 第九號」昴発行所、1909(明治42)年9月1日<br>暖き火のほとり「女子文壇 第五年第四號」女子文壇社、1909(明治42)年3月1日<br>返らぬむかし「スバル 第九號」昴発行所、1909(明治42)年9月1日<br>偶成「スバル 第九號」昴発行所、1909(明治42)年9月1日<br>沼「スバル 第十一號」昴発行所、1909(明治42)年11月1日<br>池「スバル 第十一號」昴発行所、1909(明治42)年11月1日<br>音楽と色彩と匂ひの記憶「スバル 第十號」昴発行所、1909(明治42)年10月1日<br>秋のいたましき笛「スバル 第十號」昴発行所、1909(明治42)年10月1日<br>仏蘭西の小都会「スバル 第十二號」昴発行所、1909(明治42)年12月1日<br>葡萄「スバル 第十二號」昴発行所、1909(明治42)年12月1日<br>われはあゆみき「スバル 第二年第一號」昴発行所、1910(明治43)年1月1日<br>夕ぐれ「スバル 第二年第一號」昴発行所、1910(明治43)年1月1日<br>秋「スバル 第二年第一號」昴発行所、1910(明治43)年1月1日<br>正午「三田文學 第一卷第一號」三田文學会、1910(明治43)年5月1日<br>告白「三田文學 第一卷第一號」三田文學会、1910(明治43)年5月1日<br>庭「スバル 第二年第七號」昴発行所、1910(明治43)年7月1日<br>缾「スバル 第二年第七號」昴発行所、1910(明治43)年7月1日<br>年の行く夜「三田文學 第一卷第八號」三田文學会、1910(明治43)年12月1日<br>暮方の食事「三田文學 第一卷第七號」三田文學会、1910(明治43)年11月1日<br>道のはづれに「三田文學 第一卷第七號」三田文學会、1910(明治43)年11月1日<br>ありやなしや「三田文學 第一卷第七號」三田文學会、1910(明治43)年11月1日<br>四月「秀才文壇 第九卷第十三號」文光堂、1909(明治42)年6月15日<br>ロマンチツクの夕「秀才文壇 第九卷第十三號」文光堂、1909(明治42)年6月15日<br>九月の果樹園「三田文學 第一卷第六號」三田文學会、1910(明治43)年10月1日<br>西班牙を望み見て「三田文學 第一卷第六號」三田文學会、1910(明治43)年10月1日<br>菊花の歌「花月 第七號」花月発行所、1918(大正7)年11月1日<br>あまりに泣きぬ若き時「新小説 第二十六年第三號」春陽堂、1921(大正10)年3月1日<br>夏の夜の井戸「三田文學 第二卷第十號」三田文學会、1911(明治44)年10月1日<br>奢侈「三田文學 第四卷第二號」三田文學会、1913(大正2)年2月1日
入力者入江幹夫
校正者きりんの手紙
公開 / 更新2021-12-03 / 2021-11-27
長さの目安約 35 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

死のよろこび

  シヤアル・ボオドレヱル


蝸牛匍ひまはる泥土に、
われ手づからに底知れぬ穴を掘らん。
安らかにやがてわれ老いさらぼひし骨を埋め、
水底に鱶の沈む如忘却の淵に眠るべし。

われ遺書を厭み墳墓をにくむ。
死して徒に人の涙を請はんより、
生きながらにして吾寧ろ鴉をまねぎ、
汚れたる脊髄の端々をついばましめん。

あゝ蛆虫よ。眼なく耳なき暗黒の友、
汝が為めに腐敗の子、放蕩の哲学者、
よろこべる無頼の死人は来れり。

わが亡骸にためらふ事なく食入りて、
死の中に死し、魂失せし古びし肉に、
蛆虫よ、われに問へ。猶も悩みのありやなしやと。
[#改ページ]

憂悶

  シヤアル・ボオドレヱル


大空重く垂下りて物蔽ふ蓋の如く、
久しくもいはれなき憂悶に歎くわが胸を押へ、
夜より悲しく暗き日の光、
四方閉す空より落つれば、

この世はさながらに土の牢屋か。
虫喰みの床板に頭打ち叩き、
鈍き翼に壁を撫で、
蝙蝠の如く「希望」は飛去る。

限りなく引つゞく雨の糸は、
ひろき獄屋の格子に異らず、
沈黙のいまはしき蜘蛛の一群
来りてわが脳髄に網をかく。

かゝる時なり。寺々の鐘突如としておびえ立ち、
住家なく彷徨ひ歩く亡魂の、
片意地に嘆き叫ぶごと、
大空に向ひて傷しき声を上ぐれば、

送る太鼓も楽もなき柩の車
吾が心の中をねり行きて、
欺かれし「希望」は泣き暴悪の「苦悩」
黒き旗を立つ、垂頭れしわが首の上に。
[#改ページ]

暗黒

  シヤアル・ボオドレヱル


森よ、汝、古寺の如くに吾を恐れしむ。
汝、寺の楽の如く吠ゆれば、呪はれし人の心、
臨終の喘咽聞ゆる永久の喪の室に、
DE PROFUNDIS[#ルビの「デ プロフンデス」は底本では「デ ブロフンデス」]歌ふ声、山彦となりて響くかな。

大海よ、われ汝を憎む。狂ひと叫び、
吾が魂は、そを汝、大海の声に聞く。
辱めと涙に満ちし敗れし人の苦笑ひ、
これ、おどろ/\しき海の笑ひに似たらずや。

されば夜ぞうれしき。空虚と暗黒と
赤裸々求むる我なれば、星の光覚えある言葉となりて
われに語らふ、其の光だになき夜ぞうれしき。

暗黒の其の面こそは絵絹なりけれ。
亡びたるものども皆覚えある形して
わが眼より数知れず躍りて出づれば。
[#改ページ]

仇敵

  シヤアル・ボオドレヱル


若きわが世は日の光ところまばらに漏れ落ちし
暴風雨の闇に過ぎざりき。
鳴る雷のすさまじさ降る雨のはげしさに、
わが庭に落残る紅の果実とても稀なりき。

されば今思想の秋にちかづきて、
われ鋤と鍬とにあたらしく、
洪水の土地を耕せば、洪水は土地に
墓と見る深き穴のみ穿ちたり。

われ夢む新なる花今さらに、
洗はれて河原となりしかゝる地に
生茂るべき養ひをいかで求め得べきよ。

あゝ悲し、あゝ悲し。「時」生命をくらひ、
黯澹た…

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