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真劇シリーズ
しんげきシリーズ
作品ID60785
副題02 第2話 遠回り
02 だいにわ とおまわり
原題REAL DRAMAS, No. 2: An Extra Turn
著者ホワイト フレッド・M
翻訳者奥 増夫
文字遣い新字新仮名
初出1909年
入力者奥増夫
校正者
公開 / 更新2021-02-02 / 2021-01-27
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央]

 今は亡き俳優手配師の備忘録より

[#改ページ]

 オードリ・マーボー嬢が演芸場に忽然と現れ、次々と大成功した本当のいきさつは、これまで新聞記事に決して載ってない。
 ジャイルズ・ギルマン興行師が時折事情を説明するけど、信頼する人にしか話さないし、それすらはばかる気分にならざるを得ないのは、悪くとられ、世間でほめられないからだ。
 劇場関係者なら皆知っていることだが、ジャイルズ・ギルマンは大物興業師。現役の有名女優ですら、ジャイルズ・ギルマンの巧みな仕掛けがなければ、一人として成功しないだろう。
 豊かな才能と、美貌があれば、ギルマンお抱えの女優は、まず失敗しない。ギルマンの天才的な仕掛けで、すべてうまく行く。

 二年前、オードリ・マーボー嬢は、英国の舞台に関する限り、無名だった。こんにちロンドンで週四百ポンド稼ぎ、故郷のアメリカに帰ればもっと稼ぐ。
 ところで、マーボー令嬢はニューヨークでは、生誕以来キニーネ王、サイラス・P・マーボー氏の一人娘としてお馴染みだった。
 同氏は米国の大富豪で知られ、五番街に豪邸を構え、ニューポートに別荘を持ち、事業に鉄道会社を数社持ち、その他、米国大富豪の必需品を多数所有している。
 噂では娘の結婚持参金に二千万ドルほど準備しているとか。娘のマーボー嬢は若くてかわいくて、高等教育を受けているから、結婚の敷居がものすごく高い。英国公爵は断られ、ドイツ王子は何も得られず悲嘆にくれて去った。
 オードリ・マーボー嬢はいつも気分屋だ。移り気で気まぐれ。でも野望が一つあって、次第にむくむく明確になり、強固になってきた。
 その野望とは、女優になることだ。間違いなく演技力はある。はやりの素人劇ではキラ星だし、新聞も調子のいいことを書く。
 でも本人はこんなことで浮かれていなかった。億万長者の娘なら花道を飾らせ、おだてられることなど先刻承知済みだ。自分はちゃんとした舞台に立ち、有名になりたかった。
 ところが、ここに父親のサイラス・P・マーボーが立ちはだかった。父はほかのどんなバカげたことにも金を用意してばらまいたが、舞台だけは一線を画した。むかし劇場に投資したことがあり、話しぶりでは何か知っている。
 大金持ちのかわいい娘が腹をくくったとき、なべて運命がたくらむのは取引だ。この場合、運命の取引相手は、狡猾で、身なりの良い、目つきの鋭い人物、演劇仲間でジャイルズ・ギルマンという有名な興行師だった。

 マーボー嬢は、数ある豪華な物件のなかで、小粋な単身用の別荘にギルマンをお茶に招いた。興行師と承知の上で、全米一巧妙な男を歓待した。
「いますぐ助けてほしいの。ゆうべすべて打ち明けました。いくつか役もご覧になったでしょ。私、やれる?」
「これまで貧弱な基盤で、大評判を取られましたね。成功できないわけなんてこれっ…

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