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三次実録物語
みよしじつろくものがたり
作品ID60788
著者稲生 武太夫 / 稲生 正令
文字遣い新字旧仮名
底本 「平田篤胤が解く 稲生物怪録」 角川書店
2003(平成15)年10月1日
入力者骸骨
校正者砂場清隆
公開 / 更新2022-07-01 / 2022-07-03
長さの目安約 52 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 一、三次五日市奥近在、布野村と申す所に、まづしき百姓夫婦に男子壱人もち、相くらし居けるが、其の子うまれ付殊の外じやうぶにて、六七歳ぐらひにも相成候へば、近所の十歳ばかりより十四五歳ぐらひの子供をあつめ、すもふなど取り候へども、なか/\寄付くものもなく、其外けんくわなどいたし候へども、及ぶものもなく候へば、親どもよろこび、まことに鳶が鷹とやら、此方じきが子にしておくも口おしきことなりと申ければ、女房申よふ、わづかの田地のことは、おまへと弐人しても手守護相なり候へば、五日市へ御出のせつ何卒よき所を御聞合せ、おん預なされ候へと申せば、夫より右の子供九ツに相成候とし、五日市へ出てだん/\聞合候へば、か□□(この箇所空白)の棚と申す所は、至て相撲取なり。とくげんきなる人も御座候者夫ゆへに所も、げんき小路ともふし候、咄しうけたまわり候へば夫よりかゆいの棚、関取のところへ参り、わが子のごふぜいなる次第かたり候へば、せきとり志よふちにて此方にも、供弟子御座候へば着の身きのまゝにて何分、明日つれて参られ候へ。如何様にもおん世話いたし申べくと申候へば、親よろこび厚く一礼をのべ夫より我家へかへり、女房へそのよしはなし聞せ、明るを待かね子供を連いで行き、右のせきとりの所へまゐり候へば、関とり、子供を見て殊の外歓び、近所の十三四五の弟子どもを呼び寄、相撲とらせ見るに、弟子勝者なく、なを/\主大によろこび、親父も歓かへりけるが、又/\五日市へ出候へば、様子聞にまいり、夫よりだん/\と相撲稽古いたさせ、近在へ連れあるき十二歳の度、広島へ出、名だかき師を頼み段/\所々の国々へ参り、拾八歳にて、大坂にて上の内へ入。三ツ井権八と改名して程なく江戸表へ参り、さる御大名に召抱られ、凡、弐拾年ばかり居申候所、段/\わが儘に相成り、無紋の白無垢に、三尺あまりの刀、車をこじりに付、所々人多く集る所にて、喧嘩いたしたる事御屋鋪へ相聞。夫より日本相撲御かまひにて御暇下され、夫より二三度は諸道具、其外の物売相暮し候得ども、夫より追々難渋に及び候に付、はじめて親の事思ひいだし、誠に親のばつとおもひ、せめて何卒親の墓所へ参詣いたし度おもひなにとぞ、手筋を求め、芸州様御屋敷へまゐり候。様々とだん/\心懸居もふし、御家中御供して広島まで帰り候へば、夫より在所までは二十里程のこと、夫からはいかよふ共相成り候間、段々人々相頼候に付、御屋敷に壱人心やすき人出来、夫より御上屋しきへ折/\参り候。様々相なり候内、平田五左衛門家来出、相口の家来、相頼み、折々人やとひいたし、ことの外こまり申候。其咄を権八へ申候得ば、夫こそさひわゐに御座候。御切米も入り申さず候間、連れおん帰り下され候よふに、御頼み下候へと、くれ/″\相頼候に付、其段五左衛門へ申候へば歓び、随分召抱可申候間、早々世話いたし呉候様申に付、早々五左衛門方へ参り候よふ取…

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