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真劇シリーズ
しんげきシリーズ
作品ID60866
副題03 第3話 請求書外
03 だいさんわ せいきゅうしょがい
原題REAL DRAMAS, No. 3: Not In The Bill
著者ホワイト フレッド・M
翻訳者奥 増夫
文字遣い新字新仮名
初出1909年
入力者奥増夫
校正者
公開 / 更新2021-03-02 / 2021-02-25
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

[#ページの左右中央]

 今は亡き俳優手配師の備忘録より

[#改ページ]

 御曹子が成人になったとき、慶事を祝ってお祭りがあった所はストランドフォード荘園、一族の邸宅があるロームシャイア地区だ。
 御承知のように、同家はとても由緒ある名家で、ちょっと純朴で保守的、決して当世風とは言えない。
 実を言えば、チュートン出自の現代資本家に匹敵する。家風としてストランドフォード荘園には、めったに人を入れない。ただし、月曜と金曜の絵画見学日は別だ。
 だから、同家のチャレンジャー夫人は、ずいぶん思い切って演劇を催したものである。素人芸という考えは毛頭なく、はなから玄人劇団を呼んで、同家のルーベンス館で上演したかった。
 夫のチャレンジャー卿は出費が高額でなければと、反対しなかった。もちろん演劇界の花形は呼べない。演劇の招致が難しいことは言うまでもない。
 令夫人は、ほとほと困り果てて、演劇界の第一人者に手紙を書いた。すると事は簡単に運び、返事が来た。ストランド一一九四番地のブランク芝居代行業者に手紙で希望を知らせるだけでよいとのことで、そのようにした。
 たぶんお望みの演劇が選べるだろう。それにストランドフォード荘園は鉄道幹線上にあるので、団員全員が下り急行に乗車できるし、ロンドンへは深夜一時半頃までに戻れる。ストランドフォード荘園駅には全列車が信号で止まる。あとは、必要な小切手に署名するだけとなった。
 実に小気味よいほど簡単だった。ブランク芝居代行業者は喜んで適任の俳優を手配し、チャレンジャー夫人用に喜劇をいくつか提案した。同社はそれなりの手数料で、劇を仕立て、舞台を造り、進行も管理するという。
 純朴な淑女にありがちなことだが、人生の大半を田舎で暮らすチャレンジャー夫人は人情に厚い。演劇にも熱い情感が欲しい。最終的にウイルキー・コリンズの小説を元にしたのを選んだ。
 つまり虐げられた女が冤罪に苦しむ役だ。それは本当にむごい話であり、令夫人も無実の女エスター・ウォルターズ囚人の悲哀に涙した。
 令夫人は女囚に興味があり、実際、気質も知っていた。オールドチェスター女囚刑務所はわずか六キロしか離れてないし、訪問したことがある。演劇を選ぶ際、これが影響したことは否めない。

 ブランク社の社員が時刻通りに現れ、同家のルーベンス館に小舞台を設営し、招待状を出し、プログラムを印刷した。長い一日のお祭りの中で、演劇が一番の出し物だ。
 荘園内ではクリケット対戦相手のフリーフォレスターズを迎えて試合があり、正午に庭師の食事会があり、午後には子供たちのお祭りがあった。邸宅は人々で一杯になった。
 午後四時、俳優たちが到着し、直ちに食事がふるまわれた。チャレンジャー夫人が喜んで顔を出した。
「トレナーさん、いい劇団だといいのですが」
 と令夫人。
 舞台監督のバノン・トレナー…

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