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首なし
くびなし
作品ID60878
原題TRUNK-WITHOUT-HEAD
著者ハイド ダグラス
翻訳者館野 浩美
文字遣い新字新仮名
入力者館野浩美
校正者
公開 / 更新2021-07-12 / 2021-06-27
長さの目安約 11 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 むかし、ゴールウェイ県に、夫をなくした女の人が住んでいた。ふたりの息子がおり、名前はダーモッドとドーナルといった。ダーモッドのほうが年上で、家のことを仕切っていた。おおきな農家で、地主から地代を納めに来るようにとお達しがあった。家にそれほどお金がなかったので、ダーモッドはドーナルに言いつけた。「荷車一杯ぶんのオート麦をゴールウェイに運んで売ってこい」ドーナルは荷を積んで、二頭の馬を荷車につなぎ、ゴールウェイの街まで出かけた。オート麦を売り、なかなかの稼ぎを手にした。帰り道、いつものようにとちゅうの宿屋でひとやすみして、自分は酒を飲み、馬たちには水とオート麦をやることにした。
 一杯やろうと宿屋に入ると、若者がふたり、トランプの賭けをしていた。しばらく見ていると、ひとりが言った。「おまえもやるかい?」ドーナルは賭けに加わり、オート麦の稼ぎを一ペニー残らずすってしまうまでやめなかった。「さあどうしよう。ダーモッドに殺される。ともかく、家に帰って正直に言うことにしよう」
 家に着くと、ダーモッドがたずねた。「オート麦は売れたか?」「売れたよ、なかなかの稼ぎになった」とドーナルは答えた。「金をよこせ」「ないんだ。とちゅうの宿屋でトランプの賭けをして、一ペニー残らずすってしまった」「呪われろ、二十と四人ぶんも呪われてしまえ」ダーモッドは母親のところへ行って、ドーナルが馬鹿な真似をしたのを話した。「今回ばかりはゆるしておやり。もう二度としないだろうから」と母親は言った。「明日、また荷車一杯のオート麦を売ってこい。稼ぎを失くしたりしたら、戻ってくるんじゃないぞ」とダーモッドは言った。
 つぎの日の朝、ドーナルはふたたび荷を積んで、ゴールウェイへ行った。オート麦を売り、なかなかの稼ぎを手にした。帰り道、宿屋が近づいてくると、自分に言い聞かせた。「宿屋を通り過ぎるまで、目をつぶっていよう。入りたくなったらいけない」ドーナルは目をつぶったが、宿屋まで来ると、馬たちが立ち止まって一歩も動かなくなった。ゴールウェイからの帰りはいつも、ここでオート麦と水をもらっていたからだ。ドーナルは目を開け、馬たちにオート麦と水をやり、自分はパイプに炭を入れようと、宿屋へ入った。
 入ってみると、若者たちがトランプの賭けをしていた。おまえもやるかとドーナルにたずね、ひょっとすると昨日の負けをぜんぶ取り戻せるかもなと言った。トランプにさそわれたドーナルは賭けに加わり、持っているお金を一ペニー残らずすってしまうまでやめなかった。「いまここで家になど帰れない。すったお金の代わりに馬と荷車を賭けよう」ドーナルはもう一度勝負をし、馬と荷車を取られた。どうしてよいかわからなかったが、しばらく考えたあげくにこう言った。「おれが家に帰らないと、おふくろが心配するだろう。帰ってほんとうのことを言おう。どうせ追い出…

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