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長歯の鬼婆
ながはのおにばば
作品ID60879
原題THE HAGS OF THE LONG TEETH
著者ハイド ダグラス
翻訳者館野 浩美
文字遣い新字新仮名
入力者館野浩美
校正者
公開 / 更新2022-01-17 / 2021-12-26
長さの目安約 7 ページ(500字/頁で計算)

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本文より

 むかしむかしのおおむかし、よい身分のだんな方がダブリンからロッホ・グリンに狩りや釣りをしにやってきた。ちいさな村には宿もなかったので、一行は司祭さまの家に泊まった。
 一日め、狩りに出かけて、ドゥリミナッハの森に入り、しばらくすると野ウサギを追いたてはじめた。鉄砲玉をたくさんうちかけたが、なかなかしとめられなかった。追いかけていくうちに、森の中のちいさな家に野ウサギが入ったのが見えた。
 戸口まで行くと、おおきな黒犬がいて、中に入れようとしなかった。
「そいつに玉をうちこんでやれ」とひとりが言った。そうして玉をうつと、犬は口でうけとめ、くちゃくちゃかんで、ぺっと地面に吐きだした。もういっぺん、もういっぺんとうってみたが、おなじことだった。それから犬はありったけの声でほえだして、まもなく家の中から老婆が出てきたが、その歯はどれもトングのように長かった。「うちのちびになにをするんだい」と老婆は言った。
「あんたのうちに野ウサギが入っていったんだが、この犬が中へ入れようとしないんでね」
「ちびや、伏せ」と命令して、老婆は言った。「来たけりゃ入るがいいよ」みなおじけづいたが、ひとりがたずねた。「家には、ほかにだれかいるのかい?」
「妹が六人いるよ」「それは、ぜひとも会ってみたいものだね」狩人たちが言うが早いか、六人の老婆が出てきたが、どのひとりをとっても、残りに負けずおとらず長い歯をしていた。狩人たちも、こんな見ものははじめてだった。
 森を先へゆくと、一本の木に七羽のハゲワシがとまって金切り声で鳴いていた。みなで鉄砲玉をうちかけたが、いくらやっても一羽もうち落とせそうになかった。
 そこへ白髪のおじいさんがとおりかかって、こう言った。「あれは、あっちの小屋に住んでいる長歯の鬼婆ですよ。魔法がかけられているのがわかりませんか。もうなん百年もあそこに住んでいて、犬がいるのでだれも小屋には入れません。湖の底にお城を持っていて、よく七羽の白鳥に姿を変えて湖に行きます」
 夕方になって戻った狩人たちは、見聞きしたことを司祭さまに話したが、司祭さまは本気にしなかった。
 つぎの日は司祭さまも狩人たちといっしょに行き、小屋に近づいてみると、おおきな黒犬が戸口にいた。司祭さまはお祈りの道具を首に下げていた中から、本を取り出してお祈りを唱えはじめた。犬がうるさくほえだした。鬼婆たちが出てきて、司祭さまを見ると、アイルランドじゅうに聞こえるほどの金切り声をあげた。司祭さまがお祈りを唱えるうちに、鬼婆たちはハゲワシに姿を変えて、家の上まで伸びた高い木に舞い上がった。
 司祭さまはあとすこしというところまで犬に詰め寄った。
 犬は司祭さまにとびかかり、四本足でどうと押し倒した。
 助け起こされた司祭さまは耳も聞こえず口もきけず、犬は戸口からどかなかった。
 みなは司祭さまを連れ帰り、司…

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