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![]() クリナーンのごてん |
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作品ID | 60880 |
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原題 | THE COURT OF CRINNAWN |
著者 | ハイド ダグラス Ⓦ |
翻訳者 | 館野 浩美 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
入力者 | 館野浩美 |
校正者 | |
公開 / 更新 | 2021-07-12 / 2021-06-27 |
長さの目安 | 約 9 ページ(500字/頁で計算) |
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むかしむかし、ミーオー(メイヨー)県とロスコモン県のあいだを流れる川のほとりに、身分の高い人たちがおおぜいやって来て、住むのにいい場所を川岸にさがして、そこに御殿を建てた。この人たちがどこから来たのか、まわりのちいさな村ではだれも知らなかった。マクドネルというのが、その一族の名前だった。長いあいだ、近くの村の人たちは御殿とつきあいがなかったが、あるとき病気がはやって、なん百人という人が死んだ。
夫をなくした貧しい女の、たったひとりの息子が、このおそろしい病で死にそうになったが、舌をしめらすミルクのひとしずくさえなかった。女が御殿へ行くと、御殿の人たちはなにが欲しいのかとたずねた。たったひとりの息子が病で死にかけているのに、舌をしめらすミルクのひとしずくさえないのだと女は話した。
「おつらいことですね」と御殿の貴婦人が言った。「ミルクと病を治すものをあげましょう。一時間で息子さんはすっかりよくなりますよ」それからブリキの缶をわたしてこう言った。「家にお帰りなさい。ここでもらったことをだれにも言わず、秘密にしておくかぎり、あなたと息子さんが生きているあいだ、この缶がからになることはありません。家に帰ったら、マリアさまのクローバーの葉をひとひらミルクに入れて、息子さんに飲ませなさい」
女は家に帰った。四つ葉のクローバーをミルクに入れて息子に飲ませると、一時間たつころには、すっかりよくなって起きあがった。それから女は缶を持って村から村へまわり、ミルクをもらった人たちは、ひとり残らず一時間で病気が治った。
モーリャ・ニー・キーラハーン(メアリー・ケリガン)というのが女の名前だったが、そのうわさはすぐに国じゅうに広まって、メアリーは袋いっぱいの金貨や銀貨を手にした。
ある日、メアリーはカルチャ・ブロンクスでひらかれた聖人さまのお祭りに出かけ、酒を飲みすぎて酔っぱらい、秘密をもらしてしまった。
飲みすぎのせいで正体をなくして眠りこみ、起きたときには、缶はなくなっていた。メアリーはたいそう悲しんで、カルチャ・ブロンクスから一マイルも離れていないパル・ボーン(白い穴)という場所で、身投げして死んでしまった。
クリナーンの御殿に行けば、病気を治す缶を手に入れられると、だれもが考えた。つぎの日、たくさんの人が御殿に押し寄せたが、中の人たちは、みな死んでいた。さけび声が聞こえて、なん百人もが寄り集まったが、だれひとり入ってはゆけなかった。御殿は煙でいっぱいで、中から稲光りがし、雷が聞こえていたからだ。
みなはバラーアデリーンというところの司祭さまに使いを出したが、司祭さまの答えは「わたしの受け持ちの土地ではないから、どうしようもない」だった。その夜、御殿にまぶしい光が見えて、みんなこわがった。つぎの日、リサハルの司祭さまに使いが行ったが、受け持ちではなかったので、来…