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黒き素船
くろきすぶね |
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作品ID | 60898 |
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著者 | 岩野 泡鳴 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「日本の詩歌 26 近代詩集」 中央公論社 1970(昭和45)年4月15日 |
初出 | 「天鼓 第十号」北上屋書店、1905(明治38)年8月23日 |
入力者 | hitsuji |
校正者 | きりんの手紙 |
公開 / 更新 | 2022-01-20 / 2021-12-27 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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黒き 素船 を 透かし見れば、
砂 に しやがめる 影 と まがひ、
沖 の 小島 の 薄き 見れば、
人 の 思ひに 沈む けはひ、
空 に 住へる 月 を 仰ぎ、
寂びし わが身 の 魂 と 見たり。
われは そのまま まなこ 閉ぢて、
消ゆる 世界 を 今ぞ いだく。
浮けよ、沈めよ、千々の なやみ、
千々の 悲み、身をば 乗せて。
苦なるいのち は――繁き矢 なり――
積みて 重なる 夢 の 小船。
さして 行くへ を こゝに 問はじ、
この夜、この時 われは 活きん。