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![]() ちなるひびき |
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作品ID | 60899 |
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著者 | 岩野 泡鳴 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「日本の詩歌 26 近代詩集」 中央公論社 1970(昭和45)年4月15日 |
初出 | 「国詩 第五号」1905(明治38)年7月10日 |
入力者 | hitsuji |
校正者 | きりんの手紙 |
公開 / 更新 | 2022-05-09 / 2022-04-27 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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暗き 浜辺 を たどり来たり、
水際 真近く 砂 を 握る。
握る 真砂 の もろき うちに、
闇の力 は その尾 振ひ、
手 をば つたひて 胸に 響く。
君よ、御空 の 星 を 説きて、
地なる ひゞき を 忘る勿れ、
遠き 深み の 浪 は 寄せて、
幾重 打ちては 畳む 砂 ぞ。
たとへ もろく ぞ 砕け去りて、
手 には 残れる 形 なくも、
永劫 の 憂ひ を 布くは 如何に。
暗き 浜辺 に 砂 を 握り、
君に 云ふべき事 ぞ 多き。