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作品ID | 60961 |
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著者 | 生田 春月 Ⓦ |
文字遣い | 新字旧仮名 |
底本 |
「日本の詩歌 26 近代詩集」 中央公論社 1970(昭和45)年4月15日 |
入力者 | hitsuji |
校正者 | The Creative CAT |
公開 / 更新 | 2022-05-19 / 2022-04-27 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
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『幸福』よ、巷で出逢つた見知らぬ人よ、
お前の言葉は私に通じない!
冷たい冷たいこの顔が、私の求めてゐたものだらうか?
お前の顔は不思議な親みのないものに見える、
そんなにお前は廿年、遠国をうろついてたんだ、
お前はもはや私の『望』にさへ忘れてしまはれた!
よしやお前が私の許嫁であつたにしても、
あんまり遅く来た『幸福』を誰が信じるものか!
私は蒼ざめた貧しい少女の手に眠る、
少女よ、どんなにお前は軟かく、枕のやうに
夜毎痛む頭をさゝへてくれるだらう!
少女よ、お前の名前は何と云ふ?
もしか『嘆き』と云やせぬか?
そんなら行つて『幸福』に言つてくれ、
お前さんの来るのがあんまり遅いので
もはや私があの人のお嫁になりましたと!