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愛は終了され
あいはしゅうりょうされ
作品ID60965
著者萩原 恭次郎
文字遣い新字旧仮名
底本 「日本の詩歌 26 近代詩集」 中央公論社
1970(昭和45)年4月15日
入力者hitsuji
校正者染川隆俊
公開 / 更新2024-05-23 / 2024-05-13
長さの目安約 1 ページ(500字/頁で計算)

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本文より


母の胸には 無数の血さへにじむ爪の跡!
あるひは赤き打撲の傷の跡!
投石された傷の跡! 歯に噛まれたる傷の跡!
あゝそれら痛々しい赤き傷は
みな愛児達の生存のための傷である!

忘れられぬ乳房はもはや吸ふべきものでない
転居の後の如く荒れすたれ
あゝ 愛はすでに終了されたのだ!

さるを今 ふたゝび母の胸を蹴る!
新らしき世紀の恋人のため!
新らしき世界に青年たるため!
あゝ われ等は古き父の遺跡を
見事に破壊するを主義とする!



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