えあ草紙・青空図書館 - 作品カード
楽天Kobo表紙検索
四月の夜
しがつのよる |
|
作品ID | 61029 |
---|---|
著者 | 中野 鈴子 Ⓦ |
文字遣い | 新字新仮名 |
底本 |
「中野鈴子全詩集」 フェニックス出版 1980(昭和55)年4月30日 |
初出 | 「詩学 第十二巻第八号」1957(昭和32)年7月30日 |
入力者 | 津村田悟 |
校正者 | かな とよみ |
公開 / 更新 | 2024-04-04 / 2024-04-03 |
長さの目安 | 約 1 ページ(500字/頁で計算) |
広告
広告
油気を食べてはいけない
アルコールはなめてもいけない
つかれることはいけない
あんまり話もつづけられない
あんまり本もよみつづけられない
手紙を書くことは
返事を要求することになるので手紙も書けない
それで
郵便もこない
役場の税金
村の盛金
寄附の金らは
一反の田圃から五俵の純益あるものとして割り出されている
田圃一反から 米七俵実る
雇人の賃金一反につき 米二俵半
肥料代一反につき 米半俵
税金のたぐい一反につき 米三斗
そうして
いまは四月の夜
外は日が流れ
花が白く浮いている
遠くを走る旅行者の汽車の音が聞こえて来る
わたしは 寝返りを打って
自分の呼吸をたしかめる